自室にて、私は文を読んでいた。

拝啓、お姉様。本日も会話が出来てとても嬉しかったです。お姉様、何故返事の文をくださらないのでしょう?嗚呼、お姉様は照れ屋ですものね、お姉様の都合の善い時に返事の文をくださいな。
そうそう、其の小包、開けてみて下さい。あの老舗和菓子屋・朧屋の看板商品、朧饅頭ですわ。
御親友・マリカお姉様、ユリカお姉様とお食べ下さい。
では、又
貴女を慕う桜草より

「…桜草、ねぇ…」
花言葉は『憧れ』。一体、誰なのか解らない。其れが、恐怖だった。
然し、私を慕っているのも事実。文で解る。
「名乗り出れば善いのに…」
はぁ、と溜息を吐いてしまう。
ふと眺めた満月は、静かに光を放っていた。