拝啓、お姉様。(わたくし)、貴女の()に為りとう御座います。故に、此の文を書かせて貰いました。私の事は、どうぞ気軽に「桜草(さくらそう)」と、お呼び下さいまし。

其れから始まる、(わたし)の妹に為りたいと唯只管に書き綴られた文は、二、三日に一度届く様になった。
其の事を、親友・マリカに話せば、優雅に飲んでいた紅茶の入った洋盃を、コトリ、と置いて口を開いた。
「貴女、そろそろ危機感をお持ちになれば如何(どう)です?」
「…其れは一体、どういう意味ですの?マリカ」
マリカは、糖杏菓(マカロン)を飲み込み、はぁ、と深く溜息を吐いた。
「貴女ねぇ…此処・聖ルーア女学院の顔と云われる程知られてるのですよ?もう、本当に貴女は御自身の事に興味を示さないのだから…」
「何のお話をされてますの?」
「あら、ユリカではないですか。そうそう、相談者は多い方が()いですね…」
そうして私は、マリカと同様、文の話をした。
ユリカは、ふむ、と小さく零し、形の良く、艷やかで潤った口を開いた。
「其れは…少し、様子見をしてみては如何(いかが)でしょうか。其の、『桜草』のお人も、貴女の妹に為りたいと云うのは(まこと)でしょうし」
「…えぇ、そうしてみますわ。二人共、有難う御座いました」
「いえいえ。さぁ、お稽古の時間が迫ってますわよ、マリカ。では、失礼」
「もう、ユリカったら…そんなに慌てずとも、充分間に合いますわよ?それでは、又明日(あす)
「はい、又明日(あす)