私は罪人なのです。犯してはならぬ罪を、犯してしまったのです。
えぇ、えぇ、良く解って居ます。私が犯した罪は、『殺人』と云うのです。
然し、警部殿。私も人間で御座います。あの様な事を言われて、誰が怒りを爆発させぬと云うのでしょう。

そう言って、「私」は瞼を閉じた。まるで、春の暖かな日の光を浴びながら昼寝をするかの如く。
「警部殿」は、苛立ちを顔に表していた。
此処は取調べ室。「私」は、「警部殿」に取調べを受けて居る。然し、「私」は関係無く舟を漕ぎ始めてしまった。