★公務員限定イベント★
①35歳(警察官)
→精悍な顔つきで浅黒肌、声はやや低く渋めの高身長(180センチ、筋肉質)イケメン。見事マッチングし、後日地元のショッピングモールのカフェで2時間ほど過ごした。当時県内でも車で2時間以上かかる場所で勤務していたため、下宿先からバイクを飛ばしてわざわざ来てくれた。が、道中何度も「今〇〇についた」「あと一時間くらいかかります」「今道路が混んでいて遅れそうです」「やっぱり間に合うか早く着きそうです」「ごめんなさい、少し遅れるかも」「今着きました。〇〇にいます。着いたら電話ください」と5〜15分置きに電話がかかってきた。
仕事柄仕方ないのだろうと思いはしたが、流石に鬱陶しい。私の家から車で15分くらいのところにあるショッピングモールまで、その2時間のためだけにわざわざ時間を割いて来てくれるのはありがたい。ただ、私が「やっぱり間に合うか早く着きそう」あたりでそろそろかなと思って家を出た頃、ものの5分で再び電話が鳴り、「ごめんなさい、少し遅れるかも」となり、到着まであと5〜6分くらいのところで「今着きました。〇〇にいます。着いたら電話ください」という電話の間隔。15分間の運転中に5分おきに鳴る電話。陣痛かよ、というツッコミはさておき。
この時点でだいぶ面倒くさくなっていた。しかも、バイク乗ってるせいか、ビュンビュン車が通り過ぎる時の風を切る音がノイズみたいにところどころ入って聞き取りにくかった。
結局私より遠路はるばる来た彼の方が、ジモティーな私より早く到着することになり、何となくこちらが「遅れてごめんなさい」感が出て気まずかった。これでも当初の予定より10分早いので、これで遅刻扱いされたらたまったものじゃない。
そしてご対面。開口一番、「今日はごめんね、何回も電話して。まあ現状報告は当たり前だからさ。家出る目安にもなると思って。ここはおごるね、アイスコーヒー2つ」と。
え、おい。
私まだドリンク何飲もうか考えてたのにそれは聞きもしないのか。それに、現状報告といっても二転三転するから余計混乱して目安もクソもなかったんだが。それでも「ありがとうございます」でとりあえず座った。婚活パーティー当日は地元がめちゃくちゃ近いということからマッチングし、当日中はこれから仕事に戻らないといけないという理由でアフターはなかったため、日を改めての今日になったわけだが。この2時間を要約すると、
「俺は記憶力に自信がある」
「パトロール中にすれ違った一瞬で指名手配犯を見抜いて追いかけたらビンゴ。見事に検挙したはいいものの、そういう手柄を横取りする上司がいて云々……」
「3年前に、以前付き合っていた彼女にプロポーズして失敗したトラウマがあって。ようやくその傷も癒えてきたから婚活パーティーに後輩と参加した」
「俺は細い(こまい・方言:神経質)から。ちょっとした相手の仕草も気になるし、部屋も散らかってるの許せない。以前の彼女は結構雑把で、俺とは逆の性格。その方が補い合える関係だと思って付き合ってたし、その年の正月に彼女の実家に呼ばれて一緒に鍋食べたのもあって、これはいけると思って別の日にプロポーズしたら、『無理。お前とは無いわ』って言われて……」
つまり、3年前の当時付き合っていた彼女にプロポーズを断られたのがトラウマで、恋愛に臆病になっていたがその傷も癒えてきた今、新しい出会いのチャンスにかけてみようと思って後輩と婚活パーティーへの参加を決めた。神経質な俺だけど、それでもチミは受け入れてくれるだろうか? ということだろう。意外と繊細なのか。
「はは、そんなのタイホしちゃえ。タイホタイホ」
とつまらん冗談かましたら、
「ああ、そういえば元カノも警察官でさあ。ちょっと気まずいんだよね」と華麗にスルーされた。うん、それは気まずい。いつか人事異動で同じ職場になろうものなら地獄だろうな、うん。
で?
「あ、もう2時間経っちゃった。じゃあね、話聞いてくれてありがとう」
「あ、はい」
はい?
この2時間、450円のアイスコーヒー奢られただけで、私は2時間彼の話を聞きっぱなしだったことに後になって気づいた。割に合わねえ。その彼とはそれっきりになった。
②41歳(市役所職員)
→見た目53歳のハゲ散らかした眼鏡のおじさん。性格は「温厚」と書いてあった。多分穏やかな人なのだろうと思ったら、2回目のトークタイムのときに、「これ私の連絡先です今すぐここにあなたの連絡先書いてください早くして時間がない今すぐ今すぐ早くしてほら終わっちゃうからさあ早く」と1分間の間に句読点なく迫られめっちゃ怖いがな(イベントの最中に連絡先聞き出す行為はルール・マナー違反。規約や条例、法律を遵守するのが公務員だと思ったら、プライベートは治外法権なん?ルール・マナーもクソもなかった)。貴重な1分間をそんな使い方してくるとは思いもよらず、去り際に「私のは渡しておきます後で必ず連絡ください絶対!」と言われ、その時点で「温厚どこいった?」となり候補からは外れた。しかもこのハ…、オッサン。ヤバいヤツで(終了後に男性から退室させた主催者も主催者なのだが)私が出てくるのを待って帰り道にずっと後をつけてきた。この時、私は例の警察官とマッチングして連絡先を交換し、彼が仕事に戻るというため帰る準備をして駅に向かうところだった。オッサンは明らかに不審な動きをしていたし、帰り道が同じという感じはない。気持ち悪。ヒールを履いていたが、小走りで駅に向かっていったら案の定ついてきたのでそのまま女子トイレに駆け込み、無理やり渡された連絡先をゴミ箱に捨てた。10分くらい籠ってから様子をうかがい駅のホームへダッシュ。警察官の彼に「助けて」と言えたら違ったドラマが生まれてたのだろうか。そんな勇気はなく妄想に終わった。そのパーティーから1ヶ月くらい後、見覚えのない電話番号から不在着信があり、調べると以前参加した婚活パーティーの主催会社だった。同時に新着メールも来ていて、「先日ご参加いただいた〇〇様から、あなたとどうしても連絡がとりたいと言っているので連絡先を教えてもいいか」との内容だった。
「ダメです。その人会話中に無理矢理連絡先聞き出そうとしてきたり、帰り道に待ち伏せして(あと)つけて来たりして怖い思いしました。多分、他の人にも同じことやってると思うし、まして私は別の人とマッチングしてその人との関係を大事にしたいので絶対に教えないでください」と即レスした。「わかりました。我々もそういうトラブルが今後起きないよう善処します。不安な思いをさせてしまい申し訳ございませんでした。このことは社内で共有し今後の参考にさせていただきます。貴重なご意見ありがとうございました。」と担当から返信。絶対に教えないでくださいと念押し気味に私も返信し、本気度をアピール。本気を出すところが違うだろというツッコミは……特にいらない。
公務員=安定、そんな勝手な図式から安易に参加した私。安定よりも、安全安心が一番だと実感した。