……なんか、すごく疲れたな。
花壇にはコスモスが咲いていた。今回そこにパンジーの苗を植えたので、もう少ししたらどちらも咲いている花壇が見られるだろうと先生が言っていた。きっとその時私は今日自分で植えた事を思い出して、今まで以上に綺麗に感じるのだろう……でも、きっとその時は一緒にこの気持ちも思い出すんだろうな。
植えながらずっと自分のやってしまった事が頭から離れなくて、ずっと気持ちが重たかった。先輩はどうとも思ってないのかもしれないし、先輩とはこれっきりで何も関わる事も無いのだろうけど、それでもぐるぐるぐるぐる、ずっとこの気持ちの事ばかり考えている。後悔……かな。もっと良い対応が出来たはずなのにって、そう思うからこんなに嫌な気持ちなのかな。
「あ! 居た居た、おーい」
教室に戻って荷物を取ると、靴を履き替える為に昇降口まで向かっている所だった。後ろから掛けられた声に振り返ると、廊下の奥の方から岡部先輩が大きく手を振ってこちらの方へと向かって来ていて、ギョッとした私は思わず逃げ出そうとして、いや待てよと冷静になる。先輩が手を振る相手が私な訳ある?と。きっと私の向こうに誰かいるのだろうと先輩の手を振る先を確認してみたものの、そこには誰も居なかった。
……え、私?
はー、追いついたと、先輩が笑って私に話しかける。探したよ、帰るの早くない?と。
「あ……えっと……」
「大丈夫? 疲れた?」
「い、いえ……」
「今日生徒会も駆り出されてたんだよ、先生に人足りないって言われてさ。だから違うのに来てくれて助かったなと思って。結構大変だったよな」
「…………」
あ、そうか。先輩は生徒会の人なんだった。じゃあ先輩も環境委員じゃ無いけど来てた人なんだ。
「そうだ、ちょっと来て」
そう言うと、ちょうど私が向かっていた先の昇降口にある自動販売機まで行くと、いつもどれ飲んでる?と私に尋ねる。
「? いちごみるくです……」
——ピッ、ガシャン
え?と、固まる私に差し出された、今自動販売機から出て来たばかりのいちごみるく。
「はい、どうぞ」
「え? でも……」
「いつも飲んでるなら嫌いじゃないよね? これさっきの百円だから気にしないで大丈夫」
「だけどそれじゃ、」
「あげたものが返ってくるのは寂しいから貰ってくれると俺が嬉しい。あと、なんか元気無さそうで俺があげたかったので」
「……!」
「それと……わざわざ持って来てくれた百円渡してお礼って、なんかデリカシーなかったかなって。始めから受け取ってこうやってお礼すれば良かったかなって、今更気付いた俺の後悔を消してやって下さい」
困った様に眉尻を下げて、バツが悪そうにそれを差し出す岡部先輩。
先輩が、そんな風に感じて、そんな事を考えていたなんて。
「……ありがとうございます」
私が受け取ると、先輩は嬉しそうにニッコリ笑って、またねと、もと来た廊下を戻っていって……私はその背中をずっと、見えなくなるまでずっと見つめていた。受け取ったいちごみるくは冷えていて手が冷たいはずなのに、なんだかポカポカと温かいものをもらった様に心は暖かかった。
花壇にはコスモスが咲いていた。今回そこにパンジーの苗を植えたので、もう少ししたらどちらも咲いている花壇が見られるだろうと先生が言っていた。きっとその時私は今日自分で植えた事を思い出して、今まで以上に綺麗に感じるのだろう……でも、きっとその時は一緒にこの気持ちも思い出すんだろうな。
植えながらずっと自分のやってしまった事が頭から離れなくて、ずっと気持ちが重たかった。先輩はどうとも思ってないのかもしれないし、先輩とはこれっきりで何も関わる事も無いのだろうけど、それでもぐるぐるぐるぐる、ずっとこの気持ちの事ばかり考えている。後悔……かな。もっと良い対応が出来たはずなのにって、そう思うからこんなに嫌な気持ちなのかな。
「あ! 居た居た、おーい」
教室に戻って荷物を取ると、靴を履き替える為に昇降口まで向かっている所だった。後ろから掛けられた声に振り返ると、廊下の奥の方から岡部先輩が大きく手を振ってこちらの方へと向かって来ていて、ギョッとした私は思わず逃げ出そうとして、いや待てよと冷静になる。先輩が手を振る相手が私な訳ある?と。きっと私の向こうに誰かいるのだろうと先輩の手を振る先を確認してみたものの、そこには誰も居なかった。
……え、私?
はー、追いついたと、先輩が笑って私に話しかける。探したよ、帰るの早くない?と。
「あ……えっと……」
「大丈夫? 疲れた?」
「い、いえ……」
「今日生徒会も駆り出されてたんだよ、先生に人足りないって言われてさ。だから違うのに来てくれて助かったなと思って。結構大変だったよな」
「…………」
あ、そうか。先輩は生徒会の人なんだった。じゃあ先輩も環境委員じゃ無いけど来てた人なんだ。
「そうだ、ちょっと来て」
そう言うと、ちょうど私が向かっていた先の昇降口にある自動販売機まで行くと、いつもどれ飲んでる?と私に尋ねる。
「? いちごみるくです……」
——ピッ、ガシャン
え?と、固まる私に差し出された、今自動販売機から出て来たばかりのいちごみるく。
「はい、どうぞ」
「え? でも……」
「いつも飲んでるなら嫌いじゃないよね? これさっきの百円だから気にしないで大丈夫」
「だけどそれじゃ、」
「あげたものが返ってくるのは寂しいから貰ってくれると俺が嬉しい。あと、なんか元気無さそうで俺があげたかったので」
「……!」
「それと……わざわざ持って来てくれた百円渡してお礼って、なんかデリカシーなかったかなって。始めから受け取ってこうやってお礼すれば良かったかなって、今更気付いた俺の後悔を消してやって下さい」
困った様に眉尻を下げて、バツが悪そうにそれを差し出す岡部先輩。
先輩が、そんな風に感じて、そんな事を考えていたなんて。
「……ありがとうございます」
私が受け取ると、先輩は嬉しそうにニッコリ笑って、またねと、もと来た廊下を戻っていって……私はその背中をずっと、見えなくなるまでずっと見つめていた。受け取ったいちごみるくは冷えていて手が冷たいはずなのに、なんだかポカポカと温かいものをもらった様に心は暖かかった。