宇野家にとって、大切な取引先であり一人娘の恋人候補である私の会社の上司、佐山CMOこと佐山颯斗氏が邸宅内で襲われた。
命に関わるような大けがとかでもなんでもなくて、かすり傷一つついてないんだけど、とにかく佐山CMOは怒っている。
それは宇野家にとって、大問題だった。
その瞬間、家にいたのは私と佐山CMO、宇野家の家長である孝良氏と、その弟の篤広氏、孝良氏の息子である学さんと娘の詩織さんだ。
全員がリビングに集まる。
「詩織、お前がやったのか!」
最初に口を開いたのは叔父の篤広氏だった。
「お前はずっと嫌がってたもな! こいつとお付き合いするのを!」
え~、さすがにそれはないわぁ~と思ってたら、やっぱり佐山CMOが口を開いた。
「……いや、襲ったのはあなたですよね。すっとぼけてますけど。あなたはバレてないつもりかもしれないけど、普通にバレてますから」
リビングのソファによこになり、額に乗せられていた冷たいおしぼりを外しながら、彼は体を起こした。
「詩織さんが部屋から出て行ってすぐに、突然部屋の明かりが消えました。真っ暗な部屋の中でも簡単に移動が出来たのは、あなたが彼女の部屋をよく知っていたからではないのですか?」
佐山CMOは、ゆっくりと視線を詩織さんに向ける。
「女性が護身用のスタンガンを持つ場合、普通なら外出時に携帯するはずだ。安全なはずの家の中では、使う必要がないからね。それなのによく使う鞄の中ではなく、机の引き出しに入れてあったということは、家庭内に身の危険を感じる場面があった……。ということではないですか?」
「叔父の度重なる身勝手なセクハラ行為には、心底嫌気がさしていました」
「詩織、お前は何を言ってるんだ! 小さいときから、あれほどかわいがってやったのに! あんなのはセクハラじゃない、単なる接触だ、スキンシップだ、常識の範囲内だろ!」
それで詩織さんの恋人候補になっている佐山CMOに焼きもちをやいて、スタンガンで襲ったってこと? キンモっ!
「次に私の嫌がることをしたら、そのスタンガンで抵抗するつもりでした。本気で嫌がっているんだってことを分かってほしくて」
詩織さんの細い肩が怒りと恐怖に震えている。
「いつか一線を越えられるような気がして、恐ろしくて……。彼に相談したら、それを用意してくれました。私が自分のことを安心して相談出来るような相手は、あの人しかいません」
「あの男か!」
今度は父の孝良氏が大声をあげた。
「あの男はダメだって言っただろ!」
「もう子供じゃないんだから、私の好きにさせてよ!」
「詩織!」
孝良氏は突然、私を怒鳴りつけた。
「お前が黒幕か! 詩織と颯斗くんの仲を引き裂こうとしているのは?」
「えぇ~? なんでわたしぃー!」
「そうじゃなきゃ、こんな所にまでのこのこやってきて、余計なことをしたりしないだろ!」
「余計なことなんて、なんにもしていません!」
飛んだとばっちりだ。
他に攻撃できる相手がいないからって、いくらなんでも酷すぎる。
孝良氏はぎりぎりと歯を食いしばった。
「じゃあどうして、詩織からカップを奪うようなことをさせたんだ」
「は? カップを奪う? 私が詩織さんに? なにそれ意味分かんない。そんなことしてません!」
「分かったぞ、お前と詩織がグルになってるんだ。詩織はあの男に騙されている。お前は颯斗くんに近づきたいがためにカップを口実にした。お前が詩織を言いくるめてカップを奪い取り、それで二人の仲を引き裂こうとしたんだ!」
あぁ、どうしてこう、自分に都合のいいようにしか物事を見ようとしないんだろう。
だから詩織さんがこれだけ苦悩していることに、全く気がつかないんだ。
命に関わるような大けがとかでもなんでもなくて、かすり傷一つついてないんだけど、とにかく佐山CMOは怒っている。
それは宇野家にとって、大問題だった。
その瞬間、家にいたのは私と佐山CMO、宇野家の家長である孝良氏と、その弟の篤広氏、孝良氏の息子である学さんと娘の詩織さんだ。
全員がリビングに集まる。
「詩織、お前がやったのか!」
最初に口を開いたのは叔父の篤広氏だった。
「お前はずっと嫌がってたもな! こいつとお付き合いするのを!」
え~、さすがにそれはないわぁ~と思ってたら、やっぱり佐山CMOが口を開いた。
「……いや、襲ったのはあなたですよね。すっとぼけてますけど。あなたはバレてないつもりかもしれないけど、普通にバレてますから」
リビングのソファによこになり、額に乗せられていた冷たいおしぼりを外しながら、彼は体を起こした。
「詩織さんが部屋から出て行ってすぐに、突然部屋の明かりが消えました。真っ暗な部屋の中でも簡単に移動が出来たのは、あなたが彼女の部屋をよく知っていたからではないのですか?」
佐山CMOは、ゆっくりと視線を詩織さんに向ける。
「女性が護身用のスタンガンを持つ場合、普通なら外出時に携帯するはずだ。安全なはずの家の中では、使う必要がないからね。それなのによく使う鞄の中ではなく、机の引き出しに入れてあったということは、家庭内に身の危険を感じる場面があった……。ということではないですか?」
「叔父の度重なる身勝手なセクハラ行為には、心底嫌気がさしていました」
「詩織、お前は何を言ってるんだ! 小さいときから、あれほどかわいがってやったのに! あんなのはセクハラじゃない、単なる接触だ、スキンシップだ、常識の範囲内だろ!」
それで詩織さんの恋人候補になっている佐山CMOに焼きもちをやいて、スタンガンで襲ったってこと? キンモっ!
「次に私の嫌がることをしたら、そのスタンガンで抵抗するつもりでした。本気で嫌がっているんだってことを分かってほしくて」
詩織さんの細い肩が怒りと恐怖に震えている。
「いつか一線を越えられるような気がして、恐ろしくて……。彼に相談したら、それを用意してくれました。私が自分のことを安心して相談出来るような相手は、あの人しかいません」
「あの男か!」
今度は父の孝良氏が大声をあげた。
「あの男はダメだって言っただろ!」
「もう子供じゃないんだから、私の好きにさせてよ!」
「詩織!」
孝良氏は突然、私を怒鳴りつけた。
「お前が黒幕か! 詩織と颯斗くんの仲を引き裂こうとしているのは?」
「えぇ~? なんでわたしぃー!」
「そうじゃなきゃ、こんな所にまでのこのこやってきて、余計なことをしたりしないだろ!」
「余計なことなんて、なんにもしていません!」
飛んだとばっちりだ。
他に攻撃できる相手がいないからって、いくらなんでも酷すぎる。
孝良氏はぎりぎりと歯を食いしばった。
「じゃあどうして、詩織からカップを奪うようなことをさせたんだ」
「は? カップを奪う? 私が詩織さんに? なにそれ意味分かんない。そんなことしてません!」
「分かったぞ、お前と詩織がグルになってるんだ。詩織はあの男に騙されている。お前は颯斗くんに近づきたいがためにカップを口実にした。お前が詩織を言いくるめてカップを奪い取り、それで二人の仲を引き裂こうとしたんだ!」
あぁ、どうしてこう、自分に都合のいいようにしか物事を見ようとしないんだろう。
だから詩織さんがこれだけ苦悩していることに、全く気がつかないんだ。