雪が街を埋め尽くし、人々の心に孤独や寂しさを植えつける季節がやってきた。
僕は確信していた。もやっと僕の心を掠める気持ちの正体に。
きっとこの気持ちは"恋"だ。それ以外、考えられない。
姫花のことを1人の女性として意識してしまっているのは事実。
彼女のことを目で追ってしまっている自分が、何よりの証拠だろう。
授業中、移動教室、放課後。どこにいても彼女を見つけてしまう。
探しているわけではない。無意識に見つけてしまうんだ。
初めての恋だった。16年間生きてきて初めて人を好きになった。もちろん、恭太に対する好きとは異なった意味を持つ感情。
「お疲れ様です!」
部活の先輩に挨拶をし、部室をあとにする。
先に部室を出て行ってしまった恭太に追いつきたくて、ひたすら走る。
練習後で足が折れてしまうくらいに疲れ切っていた。
それでも僕は構わずに走った。恭太に伝えたいことがあったから。
16年間生きてきて、初めて好きな人ができたと報告をしたかった。
親友には包み隠さずに話すことが、僕の中では当たり前になっていたんだ。
太陽は、すっかり雲の中へと姿を消し、空からは大粒の雪が黒いアスファルトに染みを作るように降り続けている。
勢いからして、明日には真っ白なグラウンドができてしまいそう。
50メートル先に見えた恭太の背中。1年生ながらにして、スタメンの座を勝ち取った彼の背中は大きく見える。
僕もスタメンに選ばれてはいるが、何かが足りない。恭太にはあって、僕にはないもの...
「考えても仕方ないか。おーい!きょう・・・」
スッと恭太の頭の上を覆い尽くす真っ赤な傘。
この距離では2人の会話は聞こえてはこないが、表情からして楽しげな雰囲気。
「え、は?嘘だろ・・・どうして恭太と姫花が・・・」
恭太の隣で笑っていたのは、僕の好きな桜庭姫花だった。
2人の間にあった空間が徐々に縮まっていき、ゆっくりと決して離れないよう固く結ばれる手。
見たくなかった。僕の好きな人が、僕の好きな親友と手を繋いでいるところなんて。
逃げ出したかった。今すぐにでもこの場から。
でも、足は動いてはくれなかったんだ。目の前にある現実を眺めていることしか、僕にはすることもできることもなかった。
悔しかった。悔しくて、その場で2人を問い詰めてやろうと思った。
僕に勇気さえあれば、できたかもしれない。
いや、できただろうか。大好きな2人を問い詰めるなんてこと。
近づいていかなくとも、僕がいることなど知らずに離れて行ってしまう2人。
雪に紛れるように姿を消してしまう2人を僕は、ただ見つめ続けることしかできないまま取り残された。
白と黒の境界線の狭間で、何分も動くことなく、永遠と雪に打たれ続けた。
顔に溶ける雪は、僕の涙を擬似的に形作った。止まることのない涙を模倣した味のない涙。
どのくらいその場に留まっていたのいたのだろうか。気付けば僕の周りにはうっすらと雪が積もっていた。
「帰ろ・・」
再び疲れ切った折れそうな足を引き摺りながら、僕は家へと向かった。
人生で1番重い足取りだったのは言うまでもない。
折れたのは足ではなく、僕の恋する心だった。
僕は確信していた。もやっと僕の心を掠める気持ちの正体に。
きっとこの気持ちは"恋"だ。それ以外、考えられない。
姫花のことを1人の女性として意識してしまっているのは事実。
彼女のことを目で追ってしまっている自分が、何よりの証拠だろう。
授業中、移動教室、放課後。どこにいても彼女を見つけてしまう。
探しているわけではない。無意識に見つけてしまうんだ。
初めての恋だった。16年間生きてきて初めて人を好きになった。もちろん、恭太に対する好きとは異なった意味を持つ感情。
「お疲れ様です!」
部活の先輩に挨拶をし、部室をあとにする。
先に部室を出て行ってしまった恭太に追いつきたくて、ひたすら走る。
練習後で足が折れてしまうくらいに疲れ切っていた。
それでも僕は構わずに走った。恭太に伝えたいことがあったから。
16年間生きてきて、初めて好きな人ができたと報告をしたかった。
親友には包み隠さずに話すことが、僕の中では当たり前になっていたんだ。
太陽は、すっかり雲の中へと姿を消し、空からは大粒の雪が黒いアスファルトに染みを作るように降り続けている。
勢いからして、明日には真っ白なグラウンドができてしまいそう。
50メートル先に見えた恭太の背中。1年生ながらにして、スタメンの座を勝ち取った彼の背中は大きく見える。
僕もスタメンに選ばれてはいるが、何かが足りない。恭太にはあって、僕にはないもの...
「考えても仕方ないか。おーい!きょう・・・」
スッと恭太の頭の上を覆い尽くす真っ赤な傘。
この距離では2人の会話は聞こえてはこないが、表情からして楽しげな雰囲気。
「え、は?嘘だろ・・・どうして恭太と姫花が・・・」
恭太の隣で笑っていたのは、僕の好きな桜庭姫花だった。
2人の間にあった空間が徐々に縮まっていき、ゆっくりと決して離れないよう固く結ばれる手。
見たくなかった。僕の好きな人が、僕の好きな親友と手を繋いでいるところなんて。
逃げ出したかった。今すぐにでもこの場から。
でも、足は動いてはくれなかったんだ。目の前にある現実を眺めていることしか、僕にはすることもできることもなかった。
悔しかった。悔しくて、その場で2人を問い詰めてやろうと思った。
僕に勇気さえあれば、できたかもしれない。
いや、できただろうか。大好きな2人を問い詰めるなんてこと。
近づいていかなくとも、僕がいることなど知らずに離れて行ってしまう2人。
雪に紛れるように姿を消してしまう2人を僕は、ただ見つめ続けることしかできないまま取り残された。
白と黒の境界線の狭間で、何分も動くことなく、永遠と雪に打たれ続けた。
顔に溶ける雪は、僕の涙を擬似的に形作った。止まることのない涙を模倣した味のない涙。
どのくらいその場に留まっていたのいたのだろうか。気付けば僕の周りにはうっすらと雪が積もっていた。
「帰ろ・・」
再び疲れ切った折れそうな足を引き摺りながら、僕は家へと向かった。
人生で1番重い足取りだったのは言うまでもない。
折れたのは足ではなく、僕の恋する心だった。