僕の心境に変化が現れたのは、1年生の秋頃だった。

 秋頃になると、クラスメイトの習性が自然とわかるようになってくる。

 群れで行動する者、1人を貫く者、幼稚園児みたく走り回っている者。

 高校生に慣れてきたことによって、隠していた個人個人の性格が浮き彫りになり始める。

 僕もクラスで仲がいい友達ができた。移動教室やお昼休憩は友達と過ごすようになっていた。

 それでも、僕が1番クラスで仲が良かったのは、間違いなく姫花だった。

 気付けば『さん』付で呼んでいたのも、いつからか『姫花』と呼び捨てするのが当たり前。

 春に比べると、2人で話す回数は大幅に減少した。

 季節ごとにした席替えで、僕らの席は離れてしまったのだ。

 夏、秋と2回席替えをしたが、どちらも近くなることすらなかった。むしろ、教室の端と端。
 
 教室での接点はほとんどなかったに等しい。少し寂しかった。

 でも、僕らには教室以外での接点があった。それは...部活動。

 僕と恭太は小学生の頃からサッカーをしており、高校でも当たり前のようにサッカー部に入部した。

 そこで、僕らはばったりと遭遇してしまったんだ。ジャージ姿の姫花に。

 彼女はサッカー部のマネージャーとして入部していた。

 僕は心の底から喜んだ。あの時は、純粋に隣の席で仲が良かった彼女が同じ部活なのが嬉しかった。

 部活が同じおかげ、僕らの交友関係は順調と言えるだろう。

「おーい、真也くーん! 部活一緒に行こ〜!」

 ほら、噂をすれば。駆け寄ってくる彼女にドキッとしてしまう。

 この胸の感覚は一体なんなのだろうか。体験したことのない感覚。

「今、いくよ!」

 小刻みに振動する心臓を抑えて、彼女の元へと駆ける。

 秋の肌寒い風がそっと僕の首筋を掠めていく。

 もうすぐ来る冬に、僕は淡い期待を描いていた。もしかしたら、今年のクリスマスはボッチ回避できるのではないかと。

 あぁ、冬が待ち遠しい。