「それじゃ、この問題わかる人はいるかの?そこまで難しくはないぞ〜」
黒板に綴られたたくさんの数字の羅列。数学が苦手な人が目にしたら、軽い拒否反応が出てしまいそう。
数学担当の斉藤先生は、難しくないと言ってはいるが、よく見てみるとこの問題は高校1年生の範囲外である。
予習をしてどうにかなるレベルではない。塾でかなり進んで勉強しているか、あるいは一種の天才しか解けないであろう。
斉藤先生は年齢が70代後半ということもあり、ボケているのではないかと不安になる。
70歳の先生から見た16、17、18歳はそこまで大差がないのかもしれない。
彼の3分の1もまだ生きてはいないのだから仕方がない。
入学してから、2週間が経過した。それなりに友達もでき、順風満帆の高校生活のはずだったが、ひとつだけ問題がある。
それは...隣の席の彼女。
2週間隣の席で過ごしてきて、わかったことがある。それは...
「はっ、はぃぃぃぃい!!」
「おお、え〜っと名前は・・・佐藤翔也くん!」
やられた。脇腹をシャーペンで小突かれた拍子に、変な声をあげながら立ち上がってしまった。
横で口元を押さえながら、笑いを堪えている彼女。腹立たしい。
一体誰のせいで、こんな辱めを受けることになったと思っているんだ。
それに加え、先生にまで名前を間違えられるなんて。
どうして、真也を翔也と間違えるのかわからない。手にはしっかり名前の書いた座席表が握られているのに。
ボケすぎたせいか、名前に振られているひらがなも読めなくなってしまったのだろうか。
黒板へと向かい、流れるようにスラスラと問題を解いていく。
勉強しかしてこなかった僕からすると、こんな問題は苦戦するまでもない。
教室内からは、『すごい!』と歓声も上がったが、『全然わからない』という困惑した声の方が圧倒的に多かった。
「さすがだ。やっぱり君が答えてくれてよかった。ありがとう、幸太くん」
真也でも翔太でもなくなってしまったが、気にするだけ無駄なようだ。
席に着くと同時に、隣の席の彼女を睨みつける。未だに笑っている彼女。
ツボにハマってしまったようで、笑いが止まらない模様。
「あのさ、急にお腹突くのは良くないって」
「えー、面白そうだったから。それにしても、いい反応だったね真也くん。おかげで今日1日元気に過ごせそう」
「それ絶対僕の話をネタにするつもりでしょ」
「あ、ばれた?ま、いいじゃん。それと、油断はしないことだよ」
「よくない。もう油断はしないから」
「ふーん。えいっ!」
「うぎゃぁぁぁぁぁ!」
またしても僕の脇腹にクリーンヒット。
途端にクラスメイトの視線が、僕へと刺さりまくる。四方八方からの視線に肩がすくんでしまう。
「今度はどうしたんじゃ、冬馬くん!」
とうとう一文字も自分の名前と一致しなくなってしまった。
この一件以来、僕はクラスメイトから事あるごとに"冬馬"とイジられるようになってしまったんだ。
黒板に綴られたたくさんの数字の羅列。数学が苦手な人が目にしたら、軽い拒否反応が出てしまいそう。
数学担当の斉藤先生は、難しくないと言ってはいるが、よく見てみるとこの問題は高校1年生の範囲外である。
予習をしてどうにかなるレベルではない。塾でかなり進んで勉強しているか、あるいは一種の天才しか解けないであろう。
斉藤先生は年齢が70代後半ということもあり、ボケているのではないかと不安になる。
70歳の先生から見た16、17、18歳はそこまで大差がないのかもしれない。
彼の3分の1もまだ生きてはいないのだから仕方がない。
入学してから、2週間が経過した。それなりに友達もでき、順風満帆の高校生活のはずだったが、ひとつだけ問題がある。
それは...隣の席の彼女。
2週間隣の席で過ごしてきて、わかったことがある。それは...
「はっ、はぃぃぃぃい!!」
「おお、え〜っと名前は・・・佐藤翔也くん!」
やられた。脇腹をシャーペンで小突かれた拍子に、変な声をあげながら立ち上がってしまった。
横で口元を押さえながら、笑いを堪えている彼女。腹立たしい。
一体誰のせいで、こんな辱めを受けることになったと思っているんだ。
それに加え、先生にまで名前を間違えられるなんて。
どうして、真也を翔也と間違えるのかわからない。手にはしっかり名前の書いた座席表が握られているのに。
ボケすぎたせいか、名前に振られているひらがなも読めなくなってしまったのだろうか。
黒板へと向かい、流れるようにスラスラと問題を解いていく。
勉強しかしてこなかった僕からすると、こんな問題は苦戦するまでもない。
教室内からは、『すごい!』と歓声も上がったが、『全然わからない』という困惑した声の方が圧倒的に多かった。
「さすがだ。やっぱり君が答えてくれてよかった。ありがとう、幸太くん」
真也でも翔太でもなくなってしまったが、気にするだけ無駄なようだ。
席に着くと同時に、隣の席の彼女を睨みつける。未だに笑っている彼女。
ツボにハマってしまったようで、笑いが止まらない模様。
「あのさ、急にお腹突くのは良くないって」
「えー、面白そうだったから。それにしても、いい反応だったね真也くん。おかげで今日1日元気に過ごせそう」
「それ絶対僕の話をネタにするつもりでしょ」
「あ、ばれた?ま、いいじゃん。それと、油断はしないことだよ」
「よくない。もう油断はしないから」
「ふーん。えいっ!」
「うぎゃぁぁぁぁぁ!」
またしても僕の脇腹にクリーンヒット。
途端にクラスメイトの視線が、僕へと刺さりまくる。四方八方からの視線に肩がすくんでしまう。
「今度はどうしたんじゃ、冬馬くん!」
とうとう一文字も自分の名前と一致しなくなってしまった。
この一件以来、僕はクラスメイトから事あるごとに"冬馬"とイジられるようになってしまったんだ。