幼馴染で親友の佐々木恭太とは、僕たちが記憶にない頃からの仲。
泣くことしかできなかった赤ん坊の頃から。
前に髪の毛もまだ生えていない僕らの写真を見せてもらったことがあった。
今では、全く顔の作りが違う。写真で見た僕と恭太の顔は、そっくりすぎてどちらが自分か判別できなかった。
写真に映る僕らは、くしゃっと顔の中心に目・鼻・口を寄せ集めた表情をしていた。
言ってしまえば、家族同然の関係性に近い。両親同士が親友ということもあり、自然な流れで僕らもこうなってしまった。
苗字も恭太が佐々木で、僕が佐藤と比較的日本中にありふれている苗字。
サ行のおかげで、出席番号も近く毎回席が近くになるのはありがたいことでもあるが、昔はちょっとだけ珍しい苗字に憧れていた時期もあった。
当然クラスには、同じ苗字が何人か存在する。それが唯一の欠点。
「な、真也。今日から俺ら3年生だな!」
「なんでそんなに嬉しそうなんだよ」
「だってよ、最高学年だぞ。先輩がいないってことは俺らが1番上じゃん! 楽でいい!」
「そうだけど、俺ら今年受験生ってこと忘れてないか?」
「え・・・あっ」
数秒前までは、僕らの周りに咲いている桜と同じ色を頬に貼り付けていた彼の顔が、みるみるうちに青白く血色の悪い色へと染まっていく。
まさか、本当に忘れているのでは。
「恭太・・・」
「やめろ、真也! それ以上言わないでくれ!」
「現実逃避したって無駄だからな」
偉そうに言っているが、僕だって迷っている。進学先をどうすべきか。
学費がそこまでかからない国立大学を目指すか、難関校と言われている東京の私立大学を目指すか。
どちらも僕の学力なら手が届く範囲内。
でも、僕が決断を渋っているのにはひとつだけ理由がある。
「おーい、2人とも。今日も一緒なんだね。本当に仲がいいね」
「おう、姫花。当たり前だろ、俺らは兄弟みたいなもんなんだから」
「へぇ〜、それは初めて聞いた。で、どっちがお兄ちゃんなの?」
「それはもちろん・・・」
「僕」
「だよね。真也くんだと私も思う」
「おいおい! 絶対に真也が兄とかありえないわ!」
「いや、真也くんしかありえないでしょ」
辛辣な言葉をかけられて項垂れている僕の兄弟。
桜庭姫花。高校1年生の時、僕と同じ1組だった彼女。ちなみに恭太は3組だった。
誰にでも懐く犬みたいな彼女は、男女ともに友人が多くかなり男子の中でも好印象。
学年中の男子が、彼女に恋をして儚く散っていったのは、学校では絶えない噂のひとつ。
僕もそのうちの1人になるかもしれない。僕も彼女のことが好きなんだ。
でも、この気持ちは絶対に隠しておかなければならない。
どうして。
どうして、僕の好きになった桜庭姫花は。
恭太の彼女なのだろうか。
時に世界は残酷だと、僕はこの時改めて思い知らされた。
泣くことしかできなかった赤ん坊の頃から。
前に髪の毛もまだ生えていない僕らの写真を見せてもらったことがあった。
今では、全く顔の作りが違う。写真で見た僕と恭太の顔は、そっくりすぎてどちらが自分か判別できなかった。
写真に映る僕らは、くしゃっと顔の中心に目・鼻・口を寄せ集めた表情をしていた。
言ってしまえば、家族同然の関係性に近い。両親同士が親友ということもあり、自然な流れで僕らもこうなってしまった。
苗字も恭太が佐々木で、僕が佐藤と比較的日本中にありふれている苗字。
サ行のおかげで、出席番号も近く毎回席が近くになるのはありがたいことでもあるが、昔はちょっとだけ珍しい苗字に憧れていた時期もあった。
当然クラスには、同じ苗字が何人か存在する。それが唯一の欠点。
「な、真也。今日から俺ら3年生だな!」
「なんでそんなに嬉しそうなんだよ」
「だってよ、最高学年だぞ。先輩がいないってことは俺らが1番上じゃん! 楽でいい!」
「そうだけど、俺ら今年受験生ってこと忘れてないか?」
「え・・・あっ」
数秒前までは、僕らの周りに咲いている桜と同じ色を頬に貼り付けていた彼の顔が、みるみるうちに青白く血色の悪い色へと染まっていく。
まさか、本当に忘れているのでは。
「恭太・・・」
「やめろ、真也! それ以上言わないでくれ!」
「現実逃避したって無駄だからな」
偉そうに言っているが、僕だって迷っている。進学先をどうすべきか。
学費がそこまでかからない国立大学を目指すか、難関校と言われている東京の私立大学を目指すか。
どちらも僕の学力なら手が届く範囲内。
でも、僕が決断を渋っているのにはひとつだけ理由がある。
「おーい、2人とも。今日も一緒なんだね。本当に仲がいいね」
「おう、姫花。当たり前だろ、俺らは兄弟みたいなもんなんだから」
「へぇ〜、それは初めて聞いた。で、どっちがお兄ちゃんなの?」
「それはもちろん・・・」
「僕」
「だよね。真也くんだと私も思う」
「おいおい! 絶対に真也が兄とかありえないわ!」
「いや、真也くんしかありえないでしょ」
辛辣な言葉をかけられて項垂れている僕の兄弟。
桜庭姫花。高校1年生の時、僕と同じ1組だった彼女。ちなみに恭太は3組だった。
誰にでも懐く犬みたいな彼女は、男女ともに友人が多くかなり男子の中でも好印象。
学年中の男子が、彼女に恋をして儚く散っていったのは、学校では絶えない噂のひとつ。
僕もそのうちの1人になるかもしれない。僕も彼女のことが好きなんだ。
でも、この気持ちは絶対に隠しておかなければならない。
どうして。
どうして、僕の好きになった桜庭姫花は。
恭太の彼女なのだろうか。
時に世界は残酷だと、僕はこの時改めて思い知らされた。