校門の前に立てかけられた卒業式の看板の文字。
その前に3人で立って最後の記念撮影をする。桜が舞い散る中、僕らは満面の笑みを浮かべて学校を卒業した。
思い出に残る、一生忘れもしない3年間だった。
振り返れば、まだ校舎が目に映る距離。でも、振り返りはしない。
僕の頭の中にある思い出がフラッシュバックされて、前に進みたくなくなってしまうから。
「3年間あっという間だったな。ついこの間入学式した感じがするわ」
「そうだね。懐かしいよ。3年間色々なことがありすぎたね」
「1番の思い出ってなに?」
「俺はもう決まってる!」
「私も」
「じゃあ、3人でせーので言おう。いくよ、せーの!」
『部活!!!』
僕らの声が完全に一致し、あまりの声の大きさに電線に止まっていた鳥はおろか、僕らの前を歩く卒業生たちも同様に肩を大きく揺らすほど驚いていた。
部活しかなかった。僕らの3年間は、部活一色に染まりに染まっていた気がする。
家族よりも一緒に過ごすことが多かった仲間たち。
くだらないことで笑い合い、顧問に叱られたり、勝って喜び負けて悔しがり、喜怒哀楽全てを共にした。
それが全て思い出になってしまうとは、時間の流れは早いものだ。
「部活しかないよな!」
恭太の嬉しそうな声に残りの僕らは声を出すことなく頷く。
「俺さ、この3年間は絶対に忘れないわ。この先、どんな出会いがあろうとも絶対に・・・」
僕は恭太がこの後何を言おうとしているのかわかってしまった。
出会いもあれば、必ず別れもやってくる。
僕らは今年の春からはそれぞれ別の道を歩み始める。
恭太は地元の私立大学にAO入試で、姫花は隣の県の国立大学に公募推薦で既に合格が決まっている。
僕は一般入試で都内の難関私立大に合格し、晴れて4月から東京で一人暮らし。
「私たちはいつまでも親友だよ!」
その言葉に少しだけセンチメンタルになっていた僕の心が、揺れ動いた。
「だな! 時間がある時は3人で集まろうぜ!」
恭太の言葉に賛同しつつ、僕は嘘をついていた。
本当は3人でなど集まりたくはない。
僕にとっての3年間は最高の思い出だった。でも、それとは別に1人で抱え込み続ける片想いは、思っていたよりも何倍もしんどかった。
この先、僕はどんな顔をして2人に会えばいいのだろうか。
今だって普段通りの表情で笑えているのかすらわからない。顔は笑えていたとしても、心だけは笑えていない。
僕は、いつまでこの想いを胸に抱えていかなくてはならないのだ。
離れれば薄れる想いもある。果たしてそれは、本当なのだろうか。
離れたからといって、想いは消えてくれるのか。僕はそうは思わない。
むしろ、離れたことでより一層彼女のことを頭に思い浮かべては消して、また思い浮かべる。そんな日常が続いてしまいそう。
そのことを見越して先生は、僕に今日ケジメをつけろって意味で僕に耳打ちをしてきたのだろう。
ケジメをつける。簡単に聞こえはするが、ケジメをつけるということは、今ある関係を崩すことになるんだ。
どうなるかはわからない。ただこれだけは言える。決していい方向に転ぶことはないと。
考えている間に、僕の前を進む2人の背中。僕の付け入る隙など全くない。いや、付け入るのを狙っているわけではない。
僕は自分の我慢してきた3年間のこの気持ちに終止符を打ちたいだけなんだ。
純粋に君のことが好きだったと告げたい。そうすれば、きっと明日から見えてくる景色は変わるはずだから。
桜舞う絨毯の上を2人の背中に続きながらついていく。
フワッと風に靡く綺麗な彼女の黒い髪から、桜と同じような甘い優しい香りがした。
その前に3人で立って最後の記念撮影をする。桜が舞い散る中、僕らは満面の笑みを浮かべて学校を卒業した。
思い出に残る、一生忘れもしない3年間だった。
振り返れば、まだ校舎が目に映る距離。でも、振り返りはしない。
僕の頭の中にある思い出がフラッシュバックされて、前に進みたくなくなってしまうから。
「3年間あっという間だったな。ついこの間入学式した感じがするわ」
「そうだね。懐かしいよ。3年間色々なことがありすぎたね」
「1番の思い出ってなに?」
「俺はもう決まってる!」
「私も」
「じゃあ、3人でせーので言おう。いくよ、せーの!」
『部活!!!』
僕らの声が完全に一致し、あまりの声の大きさに電線に止まっていた鳥はおろか、僕らの前を歩く卒業生たちも同様に肩を大きく揺らすほど驚いていた。
部活しかなかった。僕らの3年間は、部活一色に染まりに染まっていた気がする。
家族よりも一緒に過ごすことが多かった仲間たち。
くだらないことで笑い合い、顧問に叱られたり、勝って喜び負けて悔しがり、喜怒哀楽全てを共にした。
それが全て思い出になってしまうとは、時間の流れは早いものだ。
「部活しかないよな!」
恭太の嬉しそうな声に残りの僕らは声を出すことなく頷く。
「俺さ、この3年間は絶対に忘れないわ。この先、どんな出会いがあろうとも絶対に・・・」
僕は恭太がこの後何を言おうとしているのかわかってしまった。
出会いもあれば、必ず別れもやってくる。
僕らは今年の春からはそれぞれ別の道を歩み始める。
恭太は地元の私立大学にAO入試で、姫花は隣の県の国立大学に公募推薦で既に合格が決まっている。
僕は一般入試で都内の難関私立大に合格し、晴れて4月から東京で一人暮らし。
「私たちはいつまでも親友だよ!」
その言葉に少しだけセンチメンタルになっていた僕の心が、揺れ動いた。
「だな! 時間がある時は3人で集まろうぜ!」
恭太の言葉に賛同しつつ、僕は嘘をついていた。
本当は3人でなど集まりたくはない。
僕にとっての3年間は最高の思い出だった。でも、それとは別に1人で抱え込み続ける片想いは、思っていたよりも何倍もしんどかった。
この先、僕はどんな顔をして2人に会えばいいのだろうか。
今だって普段通りの表情で笑えているのかすらわからない。顔は笑えていたとしても、心だけは笑えていない。
僕は、いつまでこの想いを胸に抱えていかなくてはならないのだ。
離れれば薄れる想いもある。果たしてそれは、本当なのだろうか。
離れたからといって、想いは消えてくれるのか。僕はそうは思わない。
むしろ、離れたことでより一層彼女のことを頭に思い浮かべては消して、また思い浮かべる。そんな日常が続いてしまいそう。
そのことを見越して先生は、僕に今日ケジメをつけろって意味で僕に耳打ちをしてきたのだろう。
ケジメをつける。簡単に聞こえはするが、ケジメをつけるということは、今ある関係を崩すことになるんだ。
どうなるかはわからない。ただこれだけは言える。決していい方向に転ぶことはないと。
考えている間に、僕の前を進む2人の背中。僕の付け入る隙など全くない。いや、付け入るのを狙っているわけではない。
僕は自分の我慢してきた3年間のこの気持ちに終止符を打ちたいだけなんだ。
純粋に君のことが好きだったと告げたい。そうすれば、きっと明日から見えてくる景色は変わるはずだから。
桜舞う絨毯の上を2人の背中に続きながらついていく。
フワッと風に靡く綺麗な彼女の黒い髪から、桜と同じような甘い優しい香りがした。