僕は恋をした。生まれて初めて人を好きになった。

 あんなに好きになれる人はこれから先の人生で、出会えないのではないかと思うくらいの恋だった。

 でも、僕の初恋が叶うことはない。絶対に実ってはならないものだった。

 手が届くのに、見ているだけしかできない片想いだったんだ。


「おーい、真也(しんや)! 急がないと遅刻するぞ!」

 早朝の閑静な住宅街に響き渡る彼の声。

「やばい、あと5分しかないよ」

「こんなことになったのは、真也がもたもたしたからだぞ」

「それを言うなら、恭太(きょうた)が集合時間に遅刻したからだろ!」

「ま、そのくらい許してや」

 ため息が口から逃げるように漏れ出す。

「許せるか! なんでよりによって今日なんだよ!」

「だよな〜。晴れ舞台だから昨日なかなか寝付けなくて・・・」

 今日、僕らは3年間通っていた高校を卒業する。

 思えば、この3年間は僕の人生において最も濃く、記憶に残る時間だったかもしれない。

 恋に溺れ、憧れ、羨み...そして、淡い色褪せた桜の花びらのような思い出だ。