「すごいのは巫女さまも同じです。ずっと妻などいらねえと一蹴していた榊さまをめろめろにしてしまったのですからっ」

『ですからっ』

「えっ」

開斗に続いて、小さなあやかしたちが大合唱した。

みんなにこにこしていて、開斗の言葉にめちゃくちゃ同意しているようだ。

「こらお前たち、あまり騒ぐな」

社から榊が出てきた。

騒ぐなと言われた小さなあやかしたちは、榊に飛びつく。

「榊様! やっと巫女様をお迎えになられるのですね!」

「なんとめでたき! お祝いをせねば!」

「いや落ち着けお前たち。美也は今十五歳。嫁に迎えられる年齢じゃないんだよ」

『………』

え……と、小さなあやかしたちの空気が一気に冷めた。

そしてこそこそと集まりだす。

「やっぱり榊様、巫女様に振られたんだ」

「そりゃそうだ。ずーっと一方的に見守っているつもりのストーカーなのだから」

「くそじじだしな」

ひそひそ会話しているようだが声が大きいので、美也にも聞こえていた。

同じように聞こえていただろう榊の額が青筋立つ。

「お前ら~」

「ひっ! 榊様がご立腹じゃ!」

「逃げろー!」

「きゃーっ!」

蜘蛛の子を散らすように飛んでいく小さなあやかしたち。

開斗もその輪に加わっていたので、残ったのは榊と、榊についてきた十二、三歳くらいの子供だけだ。

その年齢特有の中性的な雰囲気から、性別の判断はつかなかった。

「ええと……」

美也が困っていると、榊が美也の前に立った。

「すまなかった、あいつらがうるさくて」

「いえ。みなさん仲良しですね」

榊がだいぶ舐められている気がしたが、榊がそう怒っていないので美也が咎めるところでもないだろう。

「仲良しというか、俺のこと侮ってるだけだ。……なんで笑う」

美也がくすくすと笑っていると、榊が首を傾げていた。

「榊さんがみなさんを拾って来たって、開斗くんから聞きましたよ?」

「……成り行きだ。美也、紹介しておく。俺の使役の帯天(たいてん)だ」

榊の半歩後ろにいる子どもを、そう紹介した。