榊は、美也と逢う方法を考えてくれたのだ。
「榊さん……本当神様みたいな人ですね……」
ここまで心配して、手を差し伸べてくれる。偶然にも幼い美也を助けたから、惰性で愚痴に付き合ってくれているのだと思っていた。でも、
榊は、ふわっと笑う。
「はは。本当に神様だったらよかったのにな。そしたら美也に、幸せな家族を作ってやるくらいのことは出来たかもしれない」
「そんなことしてくれなくても、私、神様を恨んだことなんてないですよ」
「そうなのか?」
意外そうな榊の顔。
美也はやっと、榊と面と向かって話していることの嬉しさを実感し始めた。
「だって、榊さんと出逢わせてくれたから。榊さんがいるから、私、今生きているんですから」
美也の素直な想いの告白に、榊は面食らったようだった。
「そ、そう、か……」
「はいっ。今も、榊さんと話してたら元気になってきました」
言葉通り、美也の顔は明るかった。
それを見た榊は、もごもごしていた口を落ち着かせ、美也の頭をぽんぽんと優しくたたいた。
「それは何より。なら、美也。戻るか」
「はい。……榊さんはどうするんですか?」
「このままどうにか学校を出るようにするよ」
「でも……榊さんみたいに目立つ人がいたら、もう騒ぎになっているんじゃ……」
「大丈夫だ、俺なんて気にしないよ」
「………」
その言葉こそ信じられない美也だった。思わず半眼になる。この天然美形が。
「ひとまず、明日の朝。美也と出逢った場所の近くにある小さな神社わかるか? あそこで待っている」
榊はそう告げて、踵を返した。
一緒に歩くのも榊の迷惑になるかと思い、美也は追いかけることはしなかった。
少し時間を空けて、教室に戻った。