「あまりにも敵の数が多いので、今外で応戦されております…!」


本来の玻玖の力なら、呪術師が何人束になろうと敵うはずもなかった。


しかし、今日は満月の夜。

妖術の力が弱まるとき。


どうして、よりにもよってこの日に――。


そのとき、逃げ惑う和葉と菊代の前にだれかが立ち塞がる。


「こんばんは、和葉様」


和葉はその人物を見て息を呑む。


なんとそれは、乙葉の結婚相手である清次郎の父親――蛭間家当主だった。


「どうして、蛭間様がここへ…!?」

「どうもこうも、妖狐という化け物が棲み着いていると聞いて、退治しにきたまでです」


ニヤリと不気味に笑う蛭間家当主。


玻玖が妖狐だと知っているのは、今の世では和葉だけ。

それがなぜ、蛭間家当主が。


しかも、屋敷に攻めてきた呪術師たちの数は、とても蛭間家だけとは思えない。