それだけ言うと、玻玖は屋敷の中へと入っていった。


いつもと様子の違う玻玖に、和葉はまた胸騒ぎがする。


体調が悪いように見えた玻玖だったが、夕食のときには普段と変わらなかった。


「和葉。このさんま、うまいぞ」

「それはよかったです…!」


玻玖に褒められ、時間をかけて焼いた甲斐があったとうれしくなる和葉。


――しかし。


『そんな地味な見た目じゃ、東雲様が違う女性に目移りしたっておかしくはないわよね。なにをお考えになっているのか、いまいちよくわからないし』


乙葉の言葉がなかなか頭から離れなかった。


たしかに玻玖は、狐の面のせいでもあるが、なにを考えているのかわかりづらい。


そういえば以前にも、帝に会いにいったあと似たような話をしていた。


『帝様がおっしゃっていたのは、旦那様がなにをお考えになっているのかわからないということだと思います』