この場は、黒百合家にとっては絶好の機会。


東雲家側の人間がいないということは、ここで起きることはだれにも気づかれない。

すべては黒百合家の4人で片付けることができる。


そうとは知らない玻玖は、黒の羽織袴姿で本殿に現れた。

その隣には、白無垢に綿帽子を被った姿がとても似合う和葉。


玻玖は、相変わらずの狐の面。

和葉は、まるで死人のように虚ろな目をしていた。


そして2人に続き、黒百合家親族である貴一、八重、乙葉が本殿へと入ってくる。


3人の視線は、美しい花嫁である和葉ではなく、玻玖の後ろ姿に向けられていた。


呪結式は順調に執り行われ、いよいよ盃を交わす『三々九度の盃』。


黒百合家にとっては、それまでの呪結式の儀式は茶番。

この『三々九度の盃』をなによりも心待ちにしていた。