「どうしたらいいのかしら…」


重たいため息をつきながら、右手に筆を持ったまま固まる和葉。


実は、和葉は文の返事に困っていた。

その文の相手とは――東雲玻玖。


玻玖は、和葉の“一応”の婚約者ということで、貴一から適当に文の返事をするようにと言われていた。


玻玖が縁談の挨拶にきたのが、半月ほど前のこと。


縁談の相手は乙葉だったはずが、それは黒百合家側の勝手な勘違いだということがわかった。

玻玖は、和葉に会いにきたのだった。


状況が理解できず困惑する和葉だったが、玻玖は和葉でなければ嫁には迎えないと固く断言した。


もちろん困惑したのは和葉だけではない。


乙葉は、神導位に見初められたのが無能な姉の和葉であることにひどく腹を立てた。

八重は、自分と容姿が似ていると言われる自慢の乙葉をこけにされ、乙葉同様に憤慨。