生まれて初めての学校生活は思った以上に退屈で、決まりも多くて面倒だった。
それに加えて入学してからもう二週間はすぎたと言うのに、廊下ですれ違う度に他学年からの視線がうるさい。
閉鎖的なこの学校で編入生は珍しく、なおかつ自分が神々廻芽の兄弟────呪しか持ち合わせない呪われた弟なのが理由なのだろう。
遠巻きに見られることも、影でヒソヒソと噂されることも慣れている。生活する場所が変わったからと言って、自分に対する周りの視線も変わるなんて期待はしていない。
どうせここでも同じ、そう思っていたはずなのに────。
「なあなあ芽、数学の宿題見せて〜」
背後からおぶさるようにのしかかるその男は、甘える猫のように擦り寄った。
人との距離感を知らないのかと疑いたくなる。
「なんだよ芽、ちょっと今日冷たくね? 薫みたいだぞ〜」
最初は無視していたけれど、そろそろ頭にきた。
「……よく本人の前で悪口言えるねお前」
「本人? あれ、もしかして」
ガラガラと教室の前の扉が開いて、芽が入ってきた。
「おはよ、朝から元気だね二人とも」
そう言って右端の自分の席に着く。
宙一は目を見開いた。
「うわっ、また間違えた! お前薫か!」
「何、また俺と薫間違えたの宙一」
「いやだって、マジでお前らそっくり過ぎなんだもん! ドッペルゲンガーかよ!」