苦い苦い液体は、全部俺の喉を通って胃の中に堕ちていく。ごくり、とすべてを飲み込んで、カップをシンクの中に置いた。

 水道の蛇口をひねって水を貯める。表面張力が耐え得るぎりぎりで止めた。だけど、一滴ぱたりと落ちて、カップの水は崩壊した。右手に握ったサツキからの手紙は、ところどころ文字が滲んでいる。これは、君の涙なのか、それとも。



「…………」



 でも、それももう別に関係ない。
 鼻をすすった。

 もう一度、ガスコンロの火をつけた。やっぱり炎は美しい。そっと手紙を燃やす。黒くなって赤くなって、新たな炎が生まれる。白い部分の面積は少しずつ小さくなって、そうしてただの煤になる。

 煙が染みて目が痛い。
 だけど涙はもう出ない。

 換気扇を止めて、火を止めた。マグカップを持ち上げて食器置きに伏せて、ああ、と思って布巾で拭いた。水分子ひとつも残さないように丁寧に拭いた。ゴミ箱にマグカップを捨てたら、ボスン、と重たい音がした。そのまま右手を持ち上げて、カチ、と電気のスイッチを引いて暗闇を呼び込んだ。

 そうして俺は、一歩一歩、君の所へ歩いていく。