そうして、二度目の俺たちの『青春』が始まった。

 今度のそれには逃れられない期限があることを俺たちは知っていた。

 知っていたれども、サツキはいつも笑っていた。歩けなくなっても、ベッドに起き上がれなくなっても、ご飯が流動食になっても、ずっと笑っていた。



「ねぇ、リキ」



 いつも通りにサツキは俺に話しかけてきた。昼間はお見舞いに家族や友人が来るけれど、夜の消灯までの時間、個室に移されたサツキの傍にいることができるのは病院の関係者である俺だけだった。

 彼の腕には、たくさんのカラフルなチューブが繋がっていた。チューブの色が増えるごとに、サツキは「おしゃれでしょ?」と言ってけらけらと笑っていた。

 


「何?」



 ザァと風の音がした。だけどサツキの声は、はっきりと俺の耳朶を揺らした。



「ぼく、もう治らないよね」

「……」



 できることなら君を助けたかった。だけどそれは、現代の医療では、難しいことだった。それを理解することができるくらいには、俺も君も大人になっていた。



「大丈夫、自分の身体のことくらい自分が一番知ってる。よくここまで生きたなって思う。ありがとうね、リキ」

「サツキ、」

「……手紙を書いたんだ。君宛だけど、ぼくが死ぬまで読んだら駄目だよ」



 ははっと乾いた笑いを零して、サツキはそっと窓の外に浮かぶ月を見上げる。