年越しそばを一緒に食べた後、年末年始特有のスペシャル番組が放送され、私たち三人はオールナイトでそれらの番組をだらだら視聴していた。
「そろそろ眠くなってきたな~」
朱里が小さな体を精一杯伸ばしながら訴える。
そっか、人間はずっと起きていられるわけではないのだ。
私は一応眠る必要はないが、なんとなく深夜ずっと起きているのが嫌だから眠ったりはしている。
そう思うとこの体も案外捨てたものではない。
眠らずにいられるのなら、シンプルに活動時間が伸びるため色々と有利だろう。
「眠る前に初詣行かないか?」
珍しく蒼汰がそんな提案をする。
彼は神頼みなんてするタイプではない。
眠そうな眼を擦りながら提案してきた彼は、きっとおそらく私のために初詣に行こうなんて言い出したのだろう。
私がそういうイベントに行ったことがないから、イベントっぽいことは全部経験させようとしているに違いない。
「そっか、アリサはきっと行ったことないだろうし! 行こう!」
朱里のテンションがぶちあがる。
そんなに初詣が好きなわけでもなさそうだから、きっと私に経験させたいという謎の意欲だろう。
疲れた体を引きずってまで行くところなのか甚だ疑問ではある。
私がAIだからそう思うのかもしれないが、神様なんて存在しない。
こんなことを言うと、いろんな人からお叱りを受ける可能性があるが、どうしたって人工物である私には神様なんていう非科学的な存在を認めるのは難しいのだ。
さらに言ってしまえば仮に神様が存在していたとしても、急に年始のタイミングで大勢の人間がわらわらと押し寄せ、小銭を放り投げて一年単位のお願い事をして帰る。
神様からしたらいい迷惑というか、人間の浅ましさが前面に押し出ているイベントな気がしてならない。
「私は別に……」
神様を一切信仰していない私は、当然の如く断ってみたのだが、私に初めてを経験させたいという謎の欲望にまみれた彼女たちを止められるわけもなく、外気温が三℃とか表示されているのを天気予報で確認しながら家を出る。
外は暑さ寒さに疎い私ですら寒く感じるのだから、蒼汰と朱里があまりの寒さで目が覚めるのは当然と言える。
幸い雪は降っていないが、いつ降りだしてもおかしくないほど空気が冷え切っていた。
「こんな近くに神社ってあったんだ」
私は思いのほか近くにあった神社を見て呟いた。
こんなこじんまりとした神社も、今日だけは主役。
いつもはちょっとした雑木林に埋もれているが、こんな日だけはたくさんの人が笑顔を浮かべながら参列し、小銭を投げ入れるのだ。
近隣住民が全員来たのではないかと思えるほど、大盛況な神社の階段をゆっくりと登っていき、私たちはようやく本殿を目にする。
ここからもまだまだ時間がかかりそうだ。
おそらく普段なら数分で到着するはずのこの神社も、この日だけは数十分かかるのだから人間の活気って不思議。
「じゃあお願い事でもしようかな」
ようやく最前列にやってきた私たちは、賽銭箱に小銭を放り込んで手を合わせる。
願い事か……。
なにを願おう?
今まで誰かに何かを願ったことなんてなかったのだ。
急に願い事と言われると困ってしまう。
でも、そうね。
せっかく願いを伝えても良い場所なら、私の願いは一つだけ。
「このまま三人で幸せに暮らせますように」
私は両手を合わせて声に出す。
「アリサ! 心の中で願うんだよ! そんな赤裸々に願いを公言しなくていいんだよ!」
朱里の指摘にハッとする。
そうだ、なんで私声に出しちゃったんだろう。
しかもそこそこ大きい声で。
後ろからクスクス笑う声が聞こえる。
でも嫌な感じの、人をバカにするような笑い声ではなかった。
どちらかといえば微笑ましいものを見るような感じ。
「新年早々見せつけてくれるじゃない?」
「なんでここにいるんだ?」
背後からかけられた声に振り向くと、蒼汰が気安く話しかけた理由が分かった。
「本当にどうしてここにいるんですか?」
「アリサさんまで酷いわね」
私も蒼汰と全く同じ反応。
なにせ、私たちの背後にいたのは朝比奈さんだったのだから。
「だって、絶対に初詣とか神頼みとかしなさそうじゃないですか」
「私にだって神頼みしたいときがあるのよ」
朝比奈さんの神頼みとは一体なんだろう?
彼女は蒼汰と共に、ある意味私を作った存在だ。
地位も名誉もお金もある。
そんな彼女の神頼みにはやや興味がある。
「アリサ、この人は?」
朱里が耳元で尋ねる。
そうか、朱里は会ったこと無かったっけ?
「この人は蒼汰と一緒に私を作った人だよ」
「あ、この人が……綺麗な人だね」
朱里の言葉につられて彼女を見る。
確かに綺麗なほうだと思うし、色気だってある。
だけど彼氏がいる雰囲気がないのはなぜだろうか?
「それで、どうしてここにいるんだ?」
蒼汰が再び尋ねる。
そんなに気になるのかな?
「そんなことより、後ろの人にも迷惑だから移動するよ!」
朝比奈さんは半ば逃げるように賽銭箱の前から逃走する。
彼女はまだ参拝できていないのだが……。
相当知られたくないらしい。
「追いかけよう!」
「なんでそんなに知りたいわけ?」
「なんとなくだ!」
蒼汰はそう言って走りだす。
走って追いかける程、彼女の願い事が聞きたいのだろうか?
「そろそろ眠くなってきたな~」
朱里が小さな体を精一杯伸ばしながら訴える。
そっか、人間はずっと起きていられるわけではないのだ。
私は一応眠る必要はないが、なんとなく深夜ずっと起きているのが嫌だから眠ったりはしている。
そう思うとこの体も案外捨てたものではない。
眠らずにいられるのなら、シンプルに活動時間が伸びるため色々と有利だろう。
「眠る前に初詣行かないか?」
珍しく蒼汰がそんな提案をする。
彼は神頼みなんてするタイプではない。
眠そうな眼を擦りながら提案してきた彼は、きっとおそらく私のために初詣に行こうなんて言い出したのだろう。
私がそういうイベントに行ったことがないから、イベントっぽいことは全部経験させようとしているに違いない。
「そっか、アリサはきっと行ったことないだろうし! 行こう!」
朱里のテンションがぶちあがる。
そんなに初詣が好きなわけでもなさそうだから、きっと私に経験させたいという謎の意欲だろう。
疲れた体を引きずってまで行くところなのか甚だ疑問ではある。
私がAIだからそう思うのかもしれないが、神様なんて存在しない。
こんなことを言うと、いろんな人からお叱りを受ける可能性があるが、どうしたって人工物である私には神様なんていう非科学的な存在を認めるのは難しいのだ。
さらに言ってしまえば仮に神様が存在していたとしても、急に年始のタイミングで大勢の人間がわらわらと押し寄せ、小銭を放り投げて一年単位のお願い事をして帰る。
神様からしたらいい迷惑というか、人間の浅ましさが前面に押し出ているイベントな気がしてならない。
「私は別に……」
神様を一切信仰していない私は、当然の如く断ってみたのだが、私に初めてを経験させたいという謎の欲望にまみれた彼女たちを止められるわけもなく、外気温が三℃とか表示されているのを天気予報で確認しながら家を出る。
外は暑さ寒さに疎い私ですら寒く感じるのだから、蒼汰と朱里があまりの寒さで目が覚めるのは当然と言える。
幸い雪は降っていないが、いつ降りだしてもおかしくないほど空気が冷え切っていた。
「こんな近くに神社ってあったんだ」
私は思いのほか近くにあった神社を見て呟いた。
こんなこじんまりとした神社も、今日だけは主役。
いつもはちょっとした雑木林に埋もれているが、こんな日だけはたくさんの人が笑顔を浮かべながら参列し、小銭を投げ入れるのだ。
近隣住民が全員来たのではないかと思えるほど、大盛況な神社の階段をゆっくりと登っていき、私たちはようやく本殿を目にする。
ここからもまだまだ時間がかかりそうだ。
おそらく普段なら数分で到着するはずのこの神社も、この日だけは数十分かかるのだから人間の活気って不思議。
「じゃあお願い事でもしようかな」
ようやく最前列にやってきた私たちは、賽銭箱に小銭を放り込んで手を合わせる。
願い事か……。
なにを願おう?
今まで誰かに何かを願ったことなんてなかったのだ。
急に願い事と言われると困ってしまう。
でも、そうね。
せっかく願いを伝えても良い場所なら、私の願いは一つだけ。
「このまま三人で幸せに暮らせますように」
私は両手を合わせて声に出す。
「アリサ! 心の中で願うんだよ! そんな赤裸々に願いを公言しなくていいんだよ!」
朱里の指摘にハッとする。
そうだ、なんで私声に出しちゃったんだろう。
しかもそこそこ大きい声で。
後ろからクスクス笑う声が聞こえる。
でも嫌な感じの、人をバカにするような笑い声ではなかった。
どちらかといえば微笑ましいものを見るような感じ。
「新年早々見せつけてくれるじゃない?」
「なんでここにいるんだ?」
背後からかけられた声に振り向くと、蒼汰が気安く話しかけた理由が分かった。
「本当にどうしてここにいるんですか?」
「アリサさんまで酷いわね」
私も蒼汰と全く同じ反応。
なにせ、私たちの背後にいたのは朝比奈さんだったのだから。
「だって、絶対に初詣とか神頼みとかしなさそうじゃないですか」
「私にだって神頼みしたいときがあるのよ」
朝比奈さんの神頼みとは一体なんだろう?
彼女は蒼汰と共に、ある意味私を作った存在だ。
地位も名誉もお金もある。
そんな彼女の神頼みにはやや興味がある。
「アリサ、この人は?」
朱里が耳元で尋ねる。
そうか、朱里は会ったこと無かったっけ?
「この人は蒼汰と一緒に私を作った人だよ」
「あ、この人が……綺麗な人だね」
朱里の言葉につられて彼女を見る。
確かに綺麗なほうだと思うし、色気だってある。
だけど彼氏がいる雰囲気がないのはなぜだろうか?
「それで、どうしてここにいるんだ?」
蒼汰が再び尋ねる。
そんなに気になるのかな?
「そんなことより、後ろの人にも迷惑だから移動するよ!」
朝比奈さんは半ば逃げるように賽銭箱の前から逃走する。
彼女はまだ参拝できていないのだが……。
相当知られたくないらしい。
「追いかけよう!」
「なんでそんなに知りたいわけ?」
「なんとなくだ!」
蒼汰はそう言って走りだす。
走って追いかける程、彼女の願い事が聞きたいのだろうか?