虹をかける

十月十四日土曜日。

今日は吹奏楽部の活動がある。

私は、陰口を言われてずっと行けなかった部活動に足を運んでみた。

あの時とは少しくらい変わってるかもしれない。

そんな期待を胸に音楽室に入った。

だがしかし、案の定陰口を言われた。

「真美、部活きてんだけど笑」

「がち?」

「邪魔すぎるんですけどー」

「早く帰ってくんないかな笑」

辛かった。

苦しかった。

だけど私は全力で生きると決めた。

だからこんな所で挫ける訳にはいかなかった。

逃げ出したい気持ちを抑えて抑えて。

三日後に迫る文化祭の吹奏楽部の演奏に参加するため、家で練習してきた成果を発揮し、合奏も頑張った。

そして私は最後のミーティングまで、しっかりと参加することができた。

辛く、苦しくても逃げなかった。

言葉では表せないほどに達成感があった。

その後はすぐには帰らず、空くんの所に向かった。

「空くん、来たよ。」

空くんは優しく笑いかける。

まるで太陽のように、明るく。

そんな空くんに私は話しかける。

「私部活で陰口たくさん言われててさ。辛くて苦しくて。どうすればいいと思う?」

空くんは少し考えてから

「気にしなければいいと思う。」

優しい声で、でも強くはっきりとそう言った。

「どうして?」

「陰口なんて言わせておけばいいんだよ。聞いてればすごい嫌な気持ちになるけど、その言葉を受け取らなければ、相手に返っていくだけだし。それに、真美は何も悪くない。悪いことしてないのに、気にする必要ないでしょ。」

とても心に刺さる言葉だった。

さらに、空くんは続けた。

「今日真美が聞いた声は陰口だけだった?」

私は今日の部活動でのことを思い出す。

そして気づいた。

「ううん。違う。陰口だけじゃない。久しぶりって声かけてくれる友達もいたし、先輩〜って笑顔で手を振ってくれる後輩もいた。」

「そうでしょ。今の真美みたいな気持ちの時って、悪いことばかり気にしちゃうと思うけど、そういう良いことにも目を向けて見たら、少しは楽になるんじゃないかな?」

「確かに。」

私はそう思った。

すごく納得した。

「気にしないことは難しいかもしれないけど、頑張ってみるよ。」

そう言って、私は空くんと別れた。