虹をかける

私は自分が嫌いだ。

悪口を言われただけで教室に行けなくなって。

陰口を言われただけで部活にも行けなくなって。

居場所がないと感じただけで家出をして。

我慢が出来なくて。

逃げてばかりで。

立ち向かう勇気もなくて。

こんな自分が、私はこの世で一番嫌いだ。

こんな自分、居なくなってしまえばいいのに。

そう思って今日私は、中学校の四階の音楽室から繋がるベランダのフェンスに腰をかけていた。

土砂降りの雨。

土砂降りの涙。

びしょ濡れの制服。

びしょ濡れの心。

死ぬのは怖い。

でも、こんな私みたいな人間、死んだ方がいいのだ。

死んで欲しいのだ。

この世にさよならを告げて雨と一緒に地面に落ちようとしたその時。

七色の髪で、青い瞳で、白い肌で、同じ歳くらいの少年が現れた。

「僕の名前は空。君は?」

驚く私にその少年は優しく声をかける。

「私は真美っていいます。」

「真美ちゃんか。よろしくね。」

そして空くんは、少し黙ったあと、私に問いかけてきた。

「これから死ぬの?」

「え?どうしてそのことを、、、」

空くんは分かっていたのだろうか。

空くんは気づいていたのだろうか。

私がこれから死のうとしていることを。

「文化祭まで生きて欲しい。」

はいもいいえも言わない私に空くんは言った。

「なんで、、、ですか?」

「僕、中学二年生の文化祭、いろいろあって出られなかったんだ。」

いろいろ。

何があったのだろう。

気になったけれど聞かないことにした。

空くんも、私が死のうとしている理由を聞かないでくれたから。

今日は十月十三日金曜日。

文化祭まで今日を含めて残り四日だ。

短いようで私にとってはとても長く感じる。

「いいかな?」

「はい。」

少し迷ったけれど、私はそう答えた。

どうせ死ぬなら、最後に空くんのお願いくらい聞いてもいいのかもしれない。

私は文化祭まで、全力で生きることにした。

どんなに辛いことがあっても、どんなに苦しいことがあっても全力で生き続けることにした。

「何かあったらここにおいで。いつでもいるから。」

「わかった。ありがとう。」