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春。今年も盛大に開催された入学式が終わりを告げて。去年と違い、俺はその会場から出てくる新入生の列ではなく、外で待機する在校生の列の中に立っていた。
何のための待機かと問われれば、それは新入生を自身の部活やサークルに囲い込むためのもの。
俺も自身が所属するサークル自作のビラを持って、数多の在校生の圧に負けぬよう、地面に足を踏ん張って立っていた。
会場の扉が開き、一斉に新入生が出てくる。
あちこちで人が動き出す。
俺は焦らず視線だけを動かして、ある一人の姿を探した。
探し人は、果たして、そこにいた。
彼の方も俺を見つけたらしい。軽く手を振って、こちらに走ってくる。
「久しぶり」
「久しぶり、入学おめでとう」
俺が笑うと、同じように彼も笑って。
「ところでこれ、どう?」
俺はさっそく一枚のビラを手渡した。与えられたノルマの分は、ビラを消化しなければならない。
「何? 美術サークル? え、お前サークルまで絵、やってるの?」
渡されたビラをまじまじと見た彼、陽乃裕也は眉を下げ、呆れたような、仕方ないなぁというような、そんな顔で俺を見た。
だから俺はこう返す。
「仕方ないだろ。だって絵が好きなんだから」
俺の言葉に、驚いたように目を見開いた彼はしかし、すぐにまた満面の笑みを浮かべてこう言った。
「それじゃあ仕方ないな! あ、そうだ、実は俺も絵が好きなんだ。そのサークル、入れてくれない?」