「確か彼女ってF組の瀬川美菜でしょ。いつの間に付き合ってたのって感じだよね。あたし、未だに納得出来ないわ。……まあ、確かに美人だからお似合いの二人だとは思うけどさ」

尚も不貞腐れた面持ちで文句を垂れる夏帆。

本当に、彼氏がいる分際で何を言っているんだかと。私は相変わらずのミーハーっぷりに肩を落とした。



……。


…………。


……って、


それはそうとっ!



「ねえ、夏帆!あんたさっきから何シカトしてんの!?」

あまりに唐突に入って来られたから、すっかり頭から抜け落ちてしまったけど、私のすぐ隣には、あの男子生徒が今も立っている。

それなのに、先程から一向にその存在に触れようとしない夏帆の行動が不自然過ぎて、私は思わず声を荒げてしまった。

「……はっ?何のこと?シカトって何?あたし、今由香里と話してるよね?」

私の質問を全く理解していないといった様子の夏帆は、私が求めているものとは全く見当違いの答えを返す。
それが益々私を焦らせ、血の気がどんどんと引いていくのが分かる。

「違うよ!今私の隣に立っている男の人の事だよっ!」

そう力強く言い放つと、今度は夏帆の顔色がみるみると青ざめていった。

「ち、ちょっと何言ってるの?い、今ここにはあたしと由香里しかいないよ?……や、やだ。もしかして頭強く打ったせいじゃないの?」

明らかな動揺と、徐々に現れてきた恐怖の色。
その表情を見た瞬間、私の中で疑いは一気に確信へと変わった。