とりあえず、ロビー内に留まっていると看護師の人達に不審に思われそうなので、私は渋々外に出て、入口前のロータリーに設置されているベンチに腰掛けた。

「……あ~あ、迂闊だったな。ちゃんと調べておけば良かった」

このまま引き返すのも何だか癪で、思わず溜息交じりの独り言が漏れ出す。

お見舞いなんて何時でも気軽に出来るものかと思っていたのに、まさか集中治療室に居たなんて。

確かに、事故に逢ってからまだ一回も目が覚めていないのなら、やはり彼の容態はそれだけ芳しくないのかもしれない。

“このまま目覚めなければ植物人間になるかもって。……あるいは……”

ふと脳裏に浮かんできた、昨日耳にした相馬君の友達の言葉。
その瞬間、背筋がぞくりと震えた。
頭の中が、徐々に負の渦に呑まれそうになる。

私はそれを振り払う為、一人大きく首を左右に振った。


ダメだ!
私まで、そんなマイナス思考になってはいけない。

彼の不安を取り除く為にここへ来たというのに、自分がそうなっては本末転倒もいいとこだ。


とりあえず、このまま耽っていると、こうして余計な考えに囚われそうになるので、今日は諦めて引き返そうとした時だった。