「ごめんね。感情が昂ぶって、つい」

すると、取り乱す私とは裏腹に、とても落ち着いた様子で頭を下げてきた相馬君。

けど、その表情は言葉とは逆に、どこか楽しげな様子でこちらを眺めてきて、私は再び悔しさがこみ上げてくる。

だから、その余裕は一体なんなのよ。
もしかして、からかわれたとか?

そう思うと、苛々が募り始めてきて、思わず眉間に皺が寄った。

「……でも、さっき言った言葉は僕の本心だから。ありがとう、朝倉さん」

なのに、今度は急に真面目な顔付きになったかと思うと、素直に感謝の言葉を述べきて、私はどう反応すればいいのか一瞬たじろいでしまう。

「べ、別に。お礼を言われるようなことなんて何もしてないから」

そして、やはり可愛くない事しか言えなくて、照れを誤魔化すように少し不貞腐れ気味にそう応えた。

でも、そんな中でも相馬君の言葉は重く私の心にのしかかってきて、胸が締め付けられる。


やっぱり、そう感じるということは、少なからず彼の中で葛藤がある証拠。

先程の男子生徒達が言うように、これから相馬君がどうなるかなんて誰にも分からない。

このまま霊体で居続けることが、今後の彼にとって大きなリスクに繋がるかもしれないし、意識が回復出来るという保証なんてどこにもない。

そうなると、もしかしたら一生誰にも気付かれずにこの世に彷徨い続ける可能性もあるかもしれない……。

そう思うと、他人事ではあるけど、怖くて堪らなくなる。