「……ねえ、もう少し優しくしてくれてもいいんじゃない?」

流石の相馬君も今の言葉にはこたえたのか、眉尻を下げて拗ねるように肩を落とす姿に、私の良心がちくりと痛んだ。

「あ、甘えないでよ!同情なんてしないんだからっ!」

なのに、私の中の天邪鬼は鎮まることを知らず見事に暴れ続け、感情のままに強い口調でそう叫ぶと、堪らずそっぽを向いてしまう。

その時、空気がふわりと揺れて、何事かと振り返った瞬間だった。

突然視界が真っ暗になったかと思うと、直ぐ脇に相馬君の横顔があって、私の心臓は大きく跳ね上がる。

感触は何も感じないけど、相馬君の腕がいつの間にか私の肩と背中に回されていて、抱き締められているんだという事が後になって分かった。

「そ、相馬君!?」

触れられている感覚は全く無いのに、何だか相馬君の息遣いが近くで感じるような気がして、全身が一気に熱を帯びていく。

それが相馬君に伝わっているのかどうかは分からないけど、兎に角、堪らなく恥ずかしい気持ちに私はきつく目を閉じた。