「…………何でもない」

それが何だか妙に悔しくて、私は不貞腐れたように口を尖らせる。

まあ、勝手に悲しげな姿を想い描いていた自分が悪いのだけど、大抵はもっと落ち込んだりするもんじゃないのかな。

……なんて、心の中で毒付いていると、相馬君は私から視線を外し、突然口元を緩ませた。

「あのさ、変な話なんだけど……。今こうして友達にさえも気付いてもらえないのに、何故だか、少し清々しく思えている自分がいるんだ」

そして、ぽつりと呟いた相馬君の言葉がよく分からず、私は黙って首を傾げる。

「僕がいなくなって、初めて周りにどれだけ想われているのかが分かるなんて。……もし、自分の葬式に居合わせる事が出来たら、それが顕著に表れたりするのかな?」

すると、自嘲気味に笑いながらそう言い放つ相馬君に対し、私の沸点は一気に上昇した。

「はあっ?随分と調子に乗ってるわね。少なくとも、人の気持ちも知らないで勝手に死ぬ奴の事なんて、私は悲しんだりしないわ!」

なんて、思わずいつもの捻くれた言葉が出てしまい、言ってから後悔する私。

けど、まるで生きる事を諦めたようなニュアンスが何だか許せなくて、苛立つ気持ちに拳を強く握りしめる。