「聞いて驚かないでよ。なんと、あの一杉圭太君だよ～！しかも、由香里をお姫様抱っこして運んでくれたんだって！もう、格好良すぎでしょっ！てか、羨ましすぎるっ！」

そして、再び甲高い声を挙げながら、二度目の興奮状態を迎えた。

「ああ、そう。一杉君ね。分かった。それじゃあ、後でお礼言っとくよ」

しかし、そんな夏帆とは裏腹に、私はとても淡々とした様子でさらりと受け流す。
その期待外れな反応に、夏帆の表情がみるみるうちに曇り始めてきた。

「っえ？それだけ？もっと感動しないの？だって一杉君だよ？全学年が注目するあの超イケメンの一杉君にお姫様抱っこされたら、普通卒倒もんでしょ！？」

頬を膨らませがら不服そうな目で連続的に質問をぶつけてくる夏帆に対し、私は呆れた様子で深い溜息を一つ吐く。

「あのね。あんたと一緒にしないでくれる？っていうか、彼氏いるのに何言ってんの。それに、一杉君だって彼女がいる訳だし、別に全然何とも思わないから」

それから、冷静にツッコミを入れて厳しく諭した。
その瞬間、夏帆の勢いが一気に萎んでくると、眉間にシワを寄せながら大きな溜息を一つ吐く。