「……はあ~、びっくりした」

少ししてから呼吸が落ち着き始めると、私は配膳カウンターの前に片手をつきながら大きく息を吐いた。

「びっくりしたじゃないわよ!何であそこで逃げるの!?本当に超意味分かんないんですけど!せっかく一杉君と話せるチャンスだったのに!」

暫くして、食券を握りしめた夏帆が私の後に追いつくと、血相を変えながら思いっきり頬を膨らませて猛抗議してくる。

「だって、まさかあの場に本人がいたなんて思ってもいなかったし……」

私は未だ小刻みに震える脈を抑えながら、バツが悪いように肩を縮こまらせた。

確かに、冷静になってみてさっきの行動は我ながらとても不自然だったと思うし、失礼だったかもしれない。

……けど……。

「なんかさ、一杉君よく由香里に話しかけてこない?さっきもやけに距離間近かったよね?探し物の事とかさ」

すると、ずっと感じていた違和感をついに夏帆も感じとったようで、核心を突く問い掛けに、私はぎくりと肩を震わせた。

「やっぱりそう思う?最近そんな感じなんだよね。今までそんな事全然なかったのに。もう訳が分かんなくて困ってるの」

私は小さく息を漏らすと、どうしたもんかと無駄に宙を仰いだ。