「……あっ、一杉君だ!」

ついさっきまでお昼のメニューで悩んでいたくせに、突然目の色を変えて、誰よりも早く一杉レーダが反応し出した夏帆。

見ると、確かに何人かのクラスメートと一緒につるみながら食堂に入って来る一杉君の姿に、私は思わず密かに身を引いてしまった。

「やっぱり、何度見ても格好いいよねえ。本当、同じクラスの私達ってマジで幸せ者だと思わない?」

「いや。別に」

本当に彼氏持ちなのかと疑うくらい、相変わらずの一杉熱が酷い夏帆に呆れながら、同意を求める言葉をさらりと交わした私。

「……てか、何でいきなりあたしの後ろに隠れるのよ」

すると、いつの間にやら自分を盾に扱われていた事に気付いた夏帆は、とても不審な目をこちらに向けてきた。

「えと……。なんか、その……何となく」

私は返答に困り、しどろもどろになりながら誤魔化してはみたものの、当然納得がいかないというように、夏帆は顰めっ面で間合いを詰めてくる。

「もしかして、一杉君の事避けてんの?意味分かんない。あんた、助けてもらったくせに何で?それとも、その後何かやらかした訳?」

「はあっ?何それ?」

そして、ズバリ図星を突かれたと同時に、最後の意味不明な問い掛けに、私はつい不服の声を漏らす。