「そ、それはそうと何訳分かんないこと言ってんの?てか、いつの間にそこに立ってたのよ?あなたが見えるって、そんなの当たり前じゃない。初対面なのに、私をからかってるの?」

そして、先程男子生徒に言われた台詞を思い出し、私はまくし立てるように質問攻めをすると、改めて不服な表情を彼に向ける。

「別にからかってなんかいないよ。本当に、どうやら君以外の人は僕のことが見えないらしいんだ。何故そういう事態になっているのかは全く分からないけど……」

すると、彼は至極真面目な顔で反論してきて、私はその目に少し圧倒されてしまった。

けど、今こうして他の人達と同じようにはっきりと見えている以上、この男子生徒の言うことなんてまるで信用出来ない。

「だから、そんな筈ないで……」

私は尚も抗議しようと口を開いた瞬間だ。


「由香里、大丈夫!?」

ほぼ同時のタイミングで、保健室の扉が勢いよく開く。

私は驚きのあまり振り返ると、そこには呼吸を荒げながら血相を変えたテニスウェア姿の親友が立っていた。

「夏帆!?」

突然の登場に私は目を丸くすると、間髪入れずに、夏帆はこちらの元へと駆け寄り私の肩を思いっきり掴む。

「聞いたよ!看板の下敷きになったんだって!?本当に大きな怪我はないの?頭は大丈夫!?」

まるでマシンガンの如く、甲高い声を挙げながら勢いが止まらない夏帆。
目を覚ましたばかりの私にとって、その声は少し頭に響きながらも、相変わらずの親友の慌てっぷりに思わず笑みが溢れた。