「……ねえ、朝倉さんってあっさりしたような人に見えて、実は人情派なんだね?」

すると、思いもよらない相馬君の問い掛けに、私は面を食らったように目を丸くする。

「はあ?な、何言ってんの!?そ、そんな事ないし!」

初めて人からそう言われた事に戸惑いを隠せず、明らかな挙動不審を見せながら思いっきり否定した。

けど、それが相馬君のツボにハマったようで、突然お腹を抱えながら笑い始める。

「そんな事あるって。……それに、冷たい人はそんな温かい絵は描けないよ」

そして、急に真面目な顔付きになると、今度は色付けしていたキャンパスをじっと眺めてきた。

「その色遣い僕は好きだな。なんか、見てて落ち着く」

そう告げると、何とも穏やかな表情で私の絵を黙って見つめてくる相馬君。

作品はまだ半分くらいしか仕上がっていないけど、キャンパスには草木の緑と真っ青な空を表現している。
所々、黄色やオレンジといった暖色系を交えるのが私の好みで、それを好きだと言ってくれた相馬君の言葉が、素直に嬉しかった。

「……あ、ありがとう」

もっと喜びを表現すればいいのに、あまり人から褒め慣れていない私は、恥ずかしさのあまりぶっきらぼうに返してしまう。

そんな捻くれた自分につくづく嫌気がさしながらも、側で私の絵を眺めてる相馬君の横顔に少しだけ胸が高鳴ってしまった。