「困ってるんでしょ?俺で良ければ一緒に探すよ」

けど、一杉君は特に気にする様子もなく、何故か積極的な様子でぐいぐいと迫ってきて、一瞬たじろいでしまう。

「だ、大丈夫だよ!大した物じゃないし!それに、これ以上一杉君には迷惑かけられないからっ!」

少し遅れてから私は大きく首を左右に振り、力一杯否定する。

まさかの一杉君のご厚意に、気持ちはとても有難いけど、そんな事をさせたらきっと瀬川さんが黙っちゃいない。

当時の記憶は全くないけど、お姫様抱っこをされたという大変恐縮な事があって以降、瀬川さんには後ろめたい気持ちがあるというのに、これ以上関われば、おそらく完全に地雷を踏む事になるだろう。

「遠慮しないでよ。ちなみに無くし物って何?」

それなのに、こちらの心境なんて全く気付いてもいない一杉君は、笑顔を崩さずに私の主張をさらりと交わしてくる。

なんで、こんなに好意的なんだろう。

私はいまいち彼の言動が理解出来ず、頭の中が若干混乱し始めてくる。

とりあえず、あまり断り続けるのも失礼な気がして、ここは素直に応じることにした。