本当に、傍から見ても美男美女のお似合いのカップルだと思う。
だから、周囲から様々な声が上がってはいるものの、誰も否定はしない。

「ああ、マジで羨ましいっ!私も一杉君に頭撫で撫でして貰いたいっ!」

すると、その隣で歯ぎしりをしながら、うらめしそうな目で二人を眺める夏帆。

「だから、あんたにはちゃんと相手がいるでしょうに。彼氏に思う存分して貰えればいいじゃない」

そんな負のオーラを放つ夏帆に、私は毎度の如く呆れた眼差しを向けながら鋭くツッコミを入れる。

「だって、一杉君みたいにあんな格好良くないし。やっぱりイケメンに頭撫でられる方が数倍いいでしょっ!」

私は夏帆の基準が全く理解出来ないと、深い溜息を吐いて明後日の方向に目を向けた。


……そういえば、私も昨日一杉君に頭を撫でられたっけか。

あの時は余裕がなかったから思考回路が上手く回らなかったけど、今にして思えば男子に頭を撫でられたのはあれが初めてかもしれない。

一杉君にしてみれば何て事ない話だろうけど、今更にして何だか胸が高鳴ってきた。


「……って、私まで何考えているんだろう!」

「はっ?」

あらぬ方向にいこうとする思考に動揺し始めた私は、思わず大きな独り言を叫んでしまい、それを夏帆はきょとんとした表情で見てくる。

「何でもない!とりあえず、行こうっ!」

そんな訳の分からない自分の行動に、我ながら恥ずかしく思えた私は、誤魔化すように夏帆の手を引いて足早にグラウンドの奥へと進んで行った。