「ねえ、相馬君てさあ、いつも試験結果で五位以内に入っている人でしょ」

「そうなの?私顔全然知らないんだけど」

「っあ、あたし去年同じクラスだったよ。なんか、大人しくて地味な感じの人。確か父親が早くに亡くなってて、小学生の双子の妹もいるから、部活には入らずにほぼ毎日バイトして生活費稼いでるんだって。泣けてくるよね~」


……そうなんだ。

と、盛り上がる夏帆達の会話に、私は相馬君の顔を思い浮かべる。
まさか、そんな苦労人だったとは露知らず、冷たい態度を取ってしまった事に今更ながら反省する私。

父親を亡くし、自分まで意識不明の重体になってしまったなんて、もしも自分だとしたら家族のことが心配でしょうがない。

それなのに、昨日の相馬君はそんな素振りは一切見せることはせず、ハピネスベアーの事にしか意識は向いていなかった。


本当に、一体どれだけ瀬川さんのことが好きなのよ。


……と、内心少し呆れていると、程なくして担任教師が入ってきて、私達の会話はそこで中断されたのだった。