「……う~ん、体が怠い……」

私は何とか重い上半身を起こすと、硬くなった肩をほぐす為に軽く腕を回す。

一体私はどれくらいの間気を失っていたんだろう。
ていうか、ここまで誰が私を運んでくれたのだろうか。

それに、使っていた絵の具とキャンパスは?
もしかして、ずっとあの場所に放置されたままなのかな?

思考回路が徐々に動き始めると同時に、沸き起こってくる疑問と心配事。

とりあえず、体がぴんぴんしている状態でここに居てもしょうがない為、私は元いた場所へと引き返す為にベットから立ち上がろうとした時だった。




「……あ~あ。直ぐに動かない方がいいと思うけど」


突如、真横から聞こえてきた男性の声。

「……え?」

それは、あまりにも唐突過ぎて、私は一瞬体が硬直する。

だって、ついさっきまで人の気配なんて全く感じなかったのに。

けど、その声は気のせいではなく、今はっきりと自分の耳に届いた。
しかも、物凄い近くで。

私は生唾を飲み込むと、恐る恐る声のした方向へと振り向く。

すると、視線を向けられた声の主は、目が合った瞬間、私以上の驚きを見せてきたのだった。