__翌朝。
結局、あれから私は相馬君に一度も会うことはなく、時間も遅くなっていた為、例のストラップを探すことはせずにそのまま家へと帰った。
文化祭までにはまだ何日かあるし、私が焦ってもしょうがない。
それに、校内で無くしたとはいえ、もっと手掛かりになるような場所を絞り出してから探した方が効率的だし、そもそも気が進まない。
そんな事を悶々と考えながら、私は教室の扉を開くと、何やら朝からクラス中が騒々しく、私は一体何が起きたのだろうと首を傾げた。
「あっ、由香里おはよう!」
すると、私の姿を目にした夏帆が、他のクラスメートの女子と一緒に窓際から手を振ってきて、とりあえず鞄を持ったまま私はそこまで向かう。
「ねえ、聞いた!?A組の人が昨日トラックにはねられて意識不明の重体なんだって」
そして、私が訊くよりも先に、夏帆は食いつくような目で事の次第を説明してくれた。
「……ああ、うん知ってる。相馬悠介って人でしょ」
その話に、彼の事がついに公に知れ渡ったんだと納得した私は、興奮する夏帆とは対照的にあっさりと返答する。
「あれ?由香里にしては随分情報早いじゃん。ちょっと意外だわ」
そんな私の反応に、つまらないといった様子で口を尖らす夏帆。
だって、本人の口から聞いたし。
……なんて、言える筈もなく、私は誤魔化すように適当にその場をやり過ごした。