そんな明からさまに戸惑っている私の反応を見て、一杉君は小さく笑うと、今度は頭に大きな掌を乗せてきて、私の肩は更に大きく震える。

「とりあえず、大事に至らなくて良かったね」

穏やかな表情でそう言うと、そのまま優しく私の頭を撫でてくる一杉君。
そのせいで、益々直視出来なくなった私は、もはや無言で首を縦に振ることしか出来ず、ただただ恥ずかしさに耐えた。



「圭太君、ここに居たんだ!」

その時、前方から響いた声に、一杉君は私から手を離すと、首だけを後ろへ向ける。
すると、間髪入れずに一杉君の腕にあの瀬川美菜が絡みついてきて、突然の出来事に私は度肝を抜かれた。

「もう、探したよ。ミーティング始めるって部長が言ってたから、早く戻ろう」

人前だというのに、瀬川さんは私の存在を気にする事なく、フワフワとしたウェーブのかかった長い髪を揺らしながら、とても甘い声を出し、長い睫毛のくりっとしたぱっちり二重で一杉君を見上げる。

「ああ、ごめんね」

それに対し、一杉君は終始穏やかな表情を崩さず笑顔でそう応えた。
私はそんな二人の様子を、暫しの間呆然としながら眺める。

まさか、先程まで話題にしていた人達がここで揃うとは。

なんて思いながら、二人の熱々ぶりを見て脳裏にふと彼の顔が浮かんだ。