「確かに、それもそうなんだけど……。どうやら僕は校外に出られないみたいなんだ。この状態になってから色々回ってはみたんだけど、外に出ようとすると何かバリアーみたいなものに遮られちゃうんだよね」

相馬君は特に気分を害したような素振りを見せる事なく、相変わらずあっけらかんとした様子で答えた。

「……へえ~」

私も私で、相馬君の返答に対し、その一言しか言葉が出てこない。
ただでさえ現実離れしたこの状況下、もはや何を言われてもあまり驚かなくなり、反応が我ながらとても薄いと感じた。

すると、突然保健室の扉が勢い良く開き、私は小さく肩を震わせた。

「朝倉さん目が覚めたって聞いたけど大丈夫!?」

振り返ると、今度の来客は私の顔を見るや否や、慌ててこちらに駆け寄る保健師の先生。
やはり、相馬君のことは見えていないようで、側にいる彼の姿には目もくれず、心配そうな面持ちで私の隣に立った。

「あ……、はい。お陰様で何とか。ご迷惑をお掛けしてすみませんでした」

とりあえず、相馬君のことは置いといて、私は申し訳ない気持ちに軽く頭を下げる。

それから、保険師の先生の問診を一通り受け終わると、特に悪いところもないので、そのままベットから起き上がった。

気付けば、いつの間にか側にいた筈の相馬君の姿が何処にも見当たらない。

きっと、早速例のストラップでも探しにいったんだろうなと思いながら、私はさほど気にすることもなく、さっさと保健室を後にしたのだった。