「僕だってこんな事に君を巻き込みたくはないよ。でも、状況を選ぶ余裕なんてないんだ。だから、君には本当に悪いと思うけど、協力してくれないかな?」

すると、相馬君はいつになく真剣な眼差しで、真っ直ぐと私の目を見据えてくる。

また、あの威圧的な視線。
しかも、それは今までの中で一番強く感じられた。
まるで、何かに迫られているような。

兎に角、尋常じゃない気迫に、私は思わず生唾を飲み込んでしまった。


ただ好きな人に誕生日プレゼントを渡すだけなのに、何でこうも必死に懇願してくるのかが分からない。
一体、彼に何があったのか、状況が全く理解出来ない。

私は頭の中が混乱し始めていく中、もはや断れる雰囲気でもない様子に、渋々ではあるが無言で首を縦に振った。


「ありがとう。恩にきるよ」

すると、私の返答でようやく目元が緩んだ相馬君は、心底安心したように満面の笑みを浮かべた。


「……ちなみに、あなたの好きな人って誰?」

何はともあれ、万が一の事態に私が渡す羽目になるのだとしたら、当然そのお相手を聞く権利はある。

私は深いため息を吐いた後、うんざりするような視線を向けながらそう尋ねると、相馬君は少しだけ表情を曇らせた。