とりあえず、こうして意識が離脱した状態であるのなら、きっとかなり重体なのだろう。
そんな大きな事故なら、校内でも知らされていい筈なのに全く聞いたこともない。

「それって、いつの出来事なの?」

私は色々と思考を巡らせながら尋ねると、相馬君は顎に手をあてて暫く考えた後、こちらに視線を向けた。

「確か今日の夕方六時前くらいの話かな?バイトの時間が迫ってたし」

そう応えた相馬君の話に、私はふと引っかかりを覚える。

夕方六時前って……、そういえば私も事故に逢ったのが大体その時間帯だったかもしれない。
看板が落ちてくる前に、たまたま向かいに設置された時計台を見ていて、確か針がその辺りを指していたような気がした。


……まさか、私だけ相馬君の姿が見れるのは、もしかしてそれが要因なのでは。


まるで電撃が走ったような閃きに、私は目を大きく見開く。

それはただの偶然なのかもしれないけど、不可思議な事が自分の目の前で起こっている今、それが全く関係ないとは否めない。

だとしたら、これは何か神様の思し召しなのだろうか……。


「朝倉さん大丈夫?」

すると、暫く全然反応がない私の顔を、相馬君は心配そうな面持ちで覗きこんできた。