「…………今、断ろうか考えてるでしょ?」

すると、そんな心境をずばりと言い当てられ、私は肩が大きく震えた。

「な、何で分かったの?」

動揺を隠しきれず、つい否定しないであっさりと認めてしまった私に対し、相馬君は口元を手で覆いながら笑いを噛み殺す。

「顔に思いっきりそう書いてあったから。朝倉さんって面白い人だよね~」

褒め言葉なのか、それともただの嫌味なのか。
私的には全く面白くない状況に、尚も笑いが止まらない様子の相馬君を、苦虫を噛み潰したような顔で睨みつけた。

「それで、仮に見つけたとしてあなたがそれまでに意識が戻ればいいけど、そうじゃなかったらどうするつもりなの?……ていうか、何でそんな状況になってるの?」

そもそもとして根本的な問題に辿り着いた私は、静かに彼に問う。

「う~ん。事の発端は、おそらく僕が下校途中にトラックにはねられたことから始まったと思うんだよね。ポケットに入れてあった筈の例のストラップがない事に気付いて慌てて引き返したらそのまま衝突したんだ。それからの事は何も分からなくて、気付けばここに立ってた……みたいな?」

まるで人事のようにあっけらかんとした様子で事情を説明する相馬君。

だから、普通なら取り乱しても全然可笑しくない状況なのに、秀才が故なのか何でこの人はこうも落ち着いていられるのか訳が分からない。