「うん、ごめんね。僕が悪かったよ。まさか、朝倉さんがそこまで怒るなんて思ってなかったから」

けど、相馬君は全く取り乱すことなく、終始落ち着いた様子で、しかもかなり痛い所を付いてくる。

「……ねえ、朝倉さん」

しかも、やんわりと微笑みながらこちらの顔を覗き込んでくるもんだから、私の怒りは一瞬にして吹っ飛ばされてしまった。

「もしかして、僕のこと好き?」

その上に、まさかの図星を突かれてしまい、もう空いた口が塞がらない状態だ。

「…………な、な、なんでそう思うの!?」

暫く硬直状態になった私は、ようやく思考回路が動き出し、なんとか声を振り絞ってはみたものの、全身は真っ赤で挙動もかなり可笑しくなってしまう。

「うーん、なんとなく。……っあ、でもただ自惚れているだけだったかな?」

一方、相馬君は全然照れている素振りも見せず、なんでそこまで余裕でいられるのか訳が分からなくて、益々悔しくなってきた私は、素直な気持ちなんて奥底へと引っ込んでしまった。

「ほ、本当に、自惚れるのもいい加減にしてよ!」

こんなに大好きなのに。
今までに味わったことの無いくらい沼落ちをしてしまったというのに。

いざ本人の前では、こんな捻くれた言葉しか出ないなんて。

ほとほと自分の性格が大嫌いだ。

そんな自分を見られたくなくて、不自然でわざとらしいと思いながらも、つい相馬君に背を向けてしまう。

「……そっか。それじゃあさ……」

すると、ポツリと聞こえた相馬君の呟く声。

そこから次の言葉を待ってもなかなか聞こえてこないので、私は不安げに彼の方に首だけを向ける。

「この前屋上で会った時、何で泣いてたの?」

先程の余裕な表情から一変して、真剣な面持ちでこちらを見てくる相馬君と視線が合い、しかもまたもや鋭い所を突かれてしまい、私は思わず目を大きく見開いてしまった。