「………………え?美菜が僕を?」

すると、よっぽど驚いたのか。
相馬君は目を点にしながら暫く固まった後ようやく口を開いたけど、その後に続く言葉がなかなか出てこない。

その反応に、またもや私の胸は張りが刺さったようにチクチクと痛み出す。

やっぱり核心を突いてしまったのだろうか。
ついに避けていた部分に触れてしまったのではないかと、鼓動がどんどん早くなってくる。

「……っぷ」

ふると、暫く沈黙が流れる中、相馬君の吹き出した声によってそれは破られた。

「あはは。やっぱり朝倉さんずっと勘違いしてるみたいだね」

そして、声高らかに笑う姿に、今度は私が呆気にとられてしまう。

「美菜が僕にそんな感情抱くなんてありえないよ。それに前も言ったでしょ?僕は好きじゃなくて大切なんだって」

またもや聞かされた“大切”という言葉。
私の中では好きと何が違うのかよく分からなくなってきて、益々混乱し始める。

そんな私の様子がよっぽど可笑しかったのか。相馬君は尚も口元に手を当てて小さく笑っていた。

「家族や友達は大切でしょ?それと同じだから」


……。

…………。

…………なるほど。


なんて、冷静になって考えてみれば分かることなのかもしれないけど……そうじゃない!


「だ、だって相馬君初めて会った時に、瀬川さんのこと片思いって言ってたじゃん!好きな人って言っても否定しなかったじゃん!」

その言葉が残っていて、私はずっと相馬君は彼女の事が好きなんだ思っていた。

だから、あれ程までに瀬川さんに必死なんだと、今の今まで苦しんでいたというのに!

相馬君の話に全然納得いかない私は、怒りのあまりつい声を張り上げてしまう。

「ああ、あれね。最初は詳しい事言うつもりなかったし、とりあえず話合わせればいいかなって思って。……まあ、あの時は美菜に避けられてたし、僕だけが一方的に幼馴染扱いしているんだという意味も込めて」

それなのに、相変わらずの余裕な態度を崩さない相馬君に、全てが誤解だったという喜ばしい事実を知ることが出来たのにも関わらず、怒りが全く収まらない。

「相馬君のバカっ!紛らわしいにも程があるから!」

なので、これまでに苦しんでいた分の悔しさも込めて、私は思いっきり怒鳴ってしまった。