「あ、そうだったんだ。ごめんね気付かなくて。退院して初登校だったからなのかな。色んな人に声掛けられて携帯見てる暇なかったんだ」

相馬君は慌ててポケットから携帯を取り出すと、今更ながらに私が送ったメッセージを確認し始める。

「……それは声掛けられるでしょ。……だって、相馬君イメージ変わり過ぎだし」

誰にとまでは言ってなかったけど、おそらく予想通りの事態だったんだと確信した私は、不貞腐れながらも、改めて変わった彼の姿をまじまじ見ると、再び鼓動が早くなっていく。

「ああ、これね。入院中ずっと凛と華にイメチェンしろって言われ続けてて。……まあ、心機一転ってやつ?」

相馬君も視線を明後日の方向に向けて、照れを誤魔化すように自分の頭を掻いた。

「……変かな?」

そして、急に子犬のような不安げな目でこちらを覗いてきたもんだから、その不意打ちに私の顔の温度は一気に上昇する。

「へ、変なわけないじゃん!……す、凄く似合うし……か、格好いいよ……」

本当ならもっと自然に褒めてあげたかったけど、相馬君の顔がすぐ近くにあって、私の心臓は今にも飛び出しそうなくらい暴れているせいで、つい挙動不審になってしまった。

「ありがとう。朝倉さんにそう言われると頑張った甲斐があるよ」

そんな私とは裏腹に、相馬君は輝きを放つような満面の笑みを見せて来て、私はもう直視する事が出来なくなり、不自然に視線を逸らしてしまう。


だから、その笑顔は反則なんだってばっ!

ていうか、さらっと平気な顔でそんな事言える相馬君って、やっぱり天然キラーだ。


なんて、またもや暴走を始める自分の思考回路をなんとか彼に悟られまいと、私は必死になりながら平常心を装った。

「……てか、相馬君のその姿見たら瀬川さんもきっと心変わりするんじゃないかな。そうなったら相馬君も嬉しいんじゃない?」

ようやく気持ちが落ち着き始めた頃、再び脳裏に浮かび上がってきた先程の光景。

相馬君は兄妹感覚だって言っていたけど、本当のところはどうなのか分からないし、この際だからはっきりさせてやろうと、私は意を決して踏み込んだ質問をする。