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「……はあ~、もう嫌だ」

目の前にある白いキャンパスに鉛筆を走らせながら、私は特大の溜息と独り言を漏らす。


今日の部活動のデッサン場所は初の試みである校舎の屋上だ。

文化祭前日に相馬君とここで話をしていた時に、なかなかの見晴らしであるという事を知り、次の作品はここから見える景色を描こうと密かに決めていた。

以前描いていた中庭と違って、ここは放課後とあり人がいない為、とても静かで広くて落ち着く。

今までなんでここを選ばなかったのだろうと思うくらい、絵を描くには凄く最適な場所であり、しかも、誰もいないこの状況下をいい事に、物思いに耽けていると、ついこうして独り言が漏れてしまう。

私はあまりデッサンに集中出来ないまま、ぼんやりと目の前に広がる街並みを眺めていた。


先程から悶々と渦巻く私の嫉妬心。

つい最近まではずっと浮かれっぱなしだったのに、今までずっと避けてきた恋愛とやらに直面したせいで、浮き沈みが激しい自分の心に段々と嫌気がさしてくる。


あれから放課後相馬君に会いたくて連絡したのに、そのメッセージは未だ既読にならず、諦めた私は結局退院後の初の登校日なのに会えずじまい。

メッセージを送ってから暫く経っても返信がないということは、もしかしたらイメージが変わった相馬君に、早速女子達からのアプローチがあったのではないかという不安がどんどんと募っていく。

これまではずっと霊体だったから私にしか見えない特別感があったのに、それが解消された今となっては、何だか少し遠い存在になってしまった気がする。


喜ばしい事なのに、最低だと思いつつもちょっと残念な気持ちもあって、兎にも角にも先程からずっと拭えない負の感情を早くなんとかしたかった。


「……絵を描けば少しは気が紛れると思ったんだけどなぁ〜……」

再び勝手に漏れ出す独り言。

もうこれは何をしてもダメだと、諦めモードに突入し始めた時だった。