「それで何を探せばいいの?ていうか、その前にあなた誰?」

とりあえず、状況整理のためには、先ずは彼の事から知らないと話にならない。

「ごめん、まだ名乗ってなかったね。僕はA組の相馬悠介。よろしく」

そう言って、口元を緩ませて柔らかく微笑みながら自己紹介をしてきた名前に、私は引っ掛かりを覚える。


相馬悠介。
なんだろう。どこかで聞いたことがあるような……。

顔は全然知らないのに何故こんなにも引っかかるのか疑問に思っていると、私はふと先週廊下に張り出されていた試験結果表が脳裏に浮かんだ。


そうだ。
相馬悠介って、確かこの前の中間試験で二位だった人。
それに、記憶が正しければ、これまでの試験でも五位以内に入っていたような。

うちの学校は毎度試験が終わると、五十番までの成績優秀者が廊下に張り出される。

かくいう私も何度か乗った事はあるけど、十位以下の人達はほぼ固定されていて、大体の名前は何となく覚えている。
その中でも相馬悠介という名前は常に上位トップクラスにいた気がした。



「…………で、君は?」

すると、なかなか返答がない私に対し、相馬君は少し怪訝な表情を向けて尋ねる。

「E組の朝倉由香里」

その一言で、遠い場所にあった意識を引き戻した私は、相馬君とは対照的に無表情で手短に自己紹介を済ました。